検索窓
今日:36 hit、昨日:38 hit、合計:25,911 hit

第三十三話 己の愚かさ 巫兎視点 ページ36

「変わったな」

そのありふれた言葉は、私の心をざわつかせた。
私は、変わったのか? 変われたのか?
……いや、違う。

「別に。
 ただ、己の愚かさに気が付いただけですよ」

一度、胸の中にあるざわつきを吐き出すと、私は静かに口を開いた。

「……私は、自分の実力を過信していたんです。
 まだ、鬼のことさえしなかった頃、鬼を斬ることができた。
 選別の時、他の子より多く鬼を斬れた。
 柱の継子になれた。
 たったそれだけで……それだけで、自分は強い(・・)
 そう、思ってしまったんです」

なんて自分は愚かだったのだろう。
たかがそれだけで、強いなどと思ってしまうなんて。
だって、私が生き残れたのは……

「今の私があるのは、全て運が良かったから。
 たまたま、巡り合った鬼が弱かったから。
 たまたま、育手が同じだったから。
 全部、環境に恵まれていたから。
 もし、本当に、私に実力があったのなら。
 あの時、私は彼らを助けられていたはずなんです」

あの時、何もせず、ただただ眺めていた自分。
あの時、眺めるだけで、助けようとしなかった自分。
自分が嫌になる。

それまで一言も発せず聞いていた不死川さんが、口を開いた。

「確かに、そうかも知れねェな。
 でも、この生業はなァ、運も必要だ。
 だから……」
「そういうことじゃないんです!
 確かに、運も必要かも知れません!
 けど! 私が、もっと早く!
 早くに、自分の弱さに気づけていたのなら!
 彼らを助けることができた!
 ……彼らは、私が殺した様なものですよ。
 すみません、急に怒鳴ってしまって」

私が、殺した(・・・)
私の弱さが、彼らを殺した。
勇気を持って疑問を打ち明けていられたら、彼らが亡くなることはなかったかもしれない。

私が話すのをやめると、しばらく気まずい沈黙が流れた。
私は申し訳なくて、不死川さんの顔を見ることができず、地面を見つめていた。

「はぁ、めんどくせェ」
「え? 」
「お前、そんなことが意味あると思ってんのか? 」

突然投げかけられた質問の内容が理解できず、
私はただ首をかしげることしか出来なかった。

第三十四話 後悔の先にあるものは 巫兎視点→←第三十二話 供花の知らせ 不死川視点



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
77人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:庵原史穂 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年12月22日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。