第十四話 紅のオオカミ・前編 巫兎視点 ページ17
私が部屋に戻って少し経つと、微かに鬼の気配がした。
鬼! とうとう動き始めたか……。
私は宿主に気づかれないよう窓から出た。
上から行った方が早いかも。
私は足に力をグッと入れると、屋根に飛び移り、そのまま一気に駆け出した。
住民に気づかれないよう注意を払いながらそっと、かつ速く屋根を飛び越えながら
鬼がいる方向へ向かった。
この気配からして十五人は確実に喰ってる。
そして今襲われてるのは……一人の女。
早く行かないと、鬼に噛み砕かれた死体なんて見るのはごめんだし。
すると村の方からドォォン! と大きな音がした。
え、何!?
私は一気に加速し踏み込むと、大きく跳んだ。
あっ、いた。
駆けつけた先では、鬼が家をなぎ倒しながら暴れていた。
私は空中で刀を鞘から引き抜くと、深く空気を吸い込んだ。
「ヒュゥォォォ、全集中・風の呼吸、
鬼の両腕を切断するつもりで刀を振ったが、
威力が弱かったのか思ったほど攻撃を与えることができなかった。
逃げまとっていた人達は突然空から刀を持って降ってきた少女に驚いていた。
チッ、流石にあの距離からじゃ無理ね。
「お、お前! い、いきなりなんなんだよ!! 」
ん? うるさいわねぇ……
「死にたくなかったら、早くここから逃げてください」
「おい! まず俺の質問に…… 」
「聞こえなかったの?
死にたくないならさっさとここから逃げて」
私が睨みながらいうと、村人たちは一瞬怯えた顔をした後、
我先にと慌てて逃げ出した。
一般人がいると、邪魔で戦えないじゃない。
はぁ、にしても随分暴れてくれたようね。
おかげであちらこちらに血は飛び散ってるし、瓦礫が落ちてて戦いにくい、最悪。
「若い、若い血の匂い!
欲しい、欲しい、俺にくれぇぇーー! 」
少しおとなしくしていた鬼が涎を垂らしながら、私に向かって一直線に襲いかかってきた。
そして大きく手を振りかぶると、私を長い爪で串刺しにしようと捕らえてきた。
私は間一髪で攻撃を避け、後ろへ飛んだ。
しかし完璧に避け切ることはできなかったのか、頬は薄く切られていた。
爪が、鋭い!
そして動きが早いし、間合いが広い。
こんなの闇雲に突っ込んでいったらすぐに串刺しにされる。
鬼は獲物を捉えることができなかった手を呆然と見つめると、猛列に叫び始めた。
その姿はまさに獲物に飢えたオオカミのようで、瞳は血涙で真っ赤に染まっていた。
第十五話 紅のオオカミ・後編 巫兎視点→←第十三話 飢えた獣 NOside
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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)
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