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「紹介するね、新しいマネージャーの……」
「や、谷地仁花ですっ!」
「あ、こ、こんにちは。四組の、神風です」
お昼休み、影山くん達が来る前にわざわざ訪ねてきて下さった潔子先輩に連れられると、ちょこんと言うが正しいようなか弱い女の子が立っていた。先輩曰く、新しいマネージャーらしい。
私が青城にお邪魔したりしている間に、先輩はマネージャーを探してくれていたらしい。私一人では今後大変だろうから、とのことだ。先輩はこの間まで唯一のマネージャーだったから、余計にそう感じて案じてくれたのだろう。
それに気づかず手伝いも出来なかった自分をとにかく責めたが、ずっと責めてもいられない。差し出された手を緩く握る。私よりも小さい手に庇護欲が湧く。可愛らしい子だ。
「い、今、事情があって、青城の方に行っているから……きちんと部活で会うのは、ちょっと先になるけれど、よ、よろしくお願いします」
「そ、そんな、こちらこそ!あの神風さんと一緒なんて……」
「わ、私、何だと思われてるの……?」
谷地さんは、私が言うのも何だけれど、かなり不思議な子だった。マフィアにでも狙われているのかという動きをしたり、人目を気にしたりと、とても愉快な子だ。日向くんと仲良くなれそうな子だなとぼんやり思った。
現在部活にいない私に、とりあえず顔合わせだけ、と連れてきてくれたらしい。潔子先輩の気遣いには毎回頭が下がる。谷地さんは五組だそうで、一緒にクラスに戻った。
「……だから、『聖人』って言われてるんだよ」
「な、何故私がそんな、大層な異名を……」
帰りしなに私のよく分からない異名を聞いたりもした。
何だ、聖人って。私だって人間なのだが……。
それにこんな地味な奴を捕まえて聖人だなんて、名付け親は誰なんだろう。考えればすぐに分かることだったが、まあいいだろう。
「そんな、聖人なんかじゃないよ」
「け、謙虚だ……!」
「ち、ちが……違うの……」
そんなにキラキラした目を向けないでほしい。私は本当にそんな大層な人間ではないのだ。一時の怒りすらも我慢できない、器の小さい人間なのだ。
谷地さんは純粋で可愛らしく、守ってあげたくなるような子だ。だからそんな子に尊敬の眼差しで見られていることがどうにもむず痒く、恥ずかしかった。
クラスの前で谷地さんと別れて、これからどうやってあの子の誤解を解こうかと悩んでいると、私の机の前が賑やかになっていた。休む暇もないな、と私は苦笑した。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時