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「せ、んぱい」

どうしてそんなに慌てた顔をしているのだろうか。そんなに大きな声を出さなくたって、私は起きるはずだ。

……起きる?もしかして、私は意識を失っていたのか。だからこんなに心配をかけてしまって、

「神風さん、熱あるでしょ!」
「は!?」
「神風さん!?」

思考する私を遮るように叫んだ先輩の声が、どうやら部室に届いたらしい。二階からどたどたと音が聞こえて、一斉にこちらに駆け寄ってきた。

「……?扉、開いてたん、ですか」

だから彼の声で皆さんが反応したんだろう。閉まっていたらこんな声で全員が反応するはずがない。なるほど、暑いから開けていたのかも。

「おい!」
「かげやま、くん。どうしたの」
「こっちのセリフだ!」

思考が纏まらない。今だと影山くんの方が頭が良いのかもしれない、と考えると、少しだけ面白かった。ただ彼はそんなぼんやりした思考も許さずに私に怒鳴った。

「何で言わなかった!」
「聞かれて、ないから」
「は!?でも朝」
「朝は、変じゃないかって聞かれた、だけだよ。体調、悪いかって、聞かれてない」
「っ屁理屈言うな!」

屁理屈って言葉知ってたんだ、なんて驚きも吹き飛ばす声量だった。その迫力に思わず肩を竦めると、彼はハッとして謝った。

私がぼんやりしたまま息も細々に黙ってしまうと、縁下先輩がふと声を出した。

「影山、ちょっと神風さんと話していい?その間に帰る支度して、送ってあげな」
「……ウス」
「えっ、だ、駄目、だって」

勉強があるのに。教えなくちゃいけないのに。
その為に私は、迷惑をかけたくなくて。

「いいから。他の皆も離れていいですから」

顔をあまり上げていなかったから他に誰がいるかは分からなかったが、敬語を使っている限り、三年生の方々もいるらしかった。澤村先輩らしき声が「分かった」と言って、それを聞いて戸惑ったように足音が散った。

かく言う私も先輩が何を考えているか分からない。ただあの勉強会が中止になった事だけが悔しくて、きゅっと口を結んだ。

「神風さん、そうまでして勉強を教えたいのはどうして?」

先輩が隣に腰を下ろして私に声をかけた。その優しい声色に、ほろりと言葉が出た。

「わ、たし」
「うん」
「勉強、だけが、取り柄だから、それで二人の役に立てなかったら、何も、無くなるんじゃ、って」
「うん」
「ふっ、ふた、りが」

ぽろ、と涙が出た。

「二人が、したいこと、してほしくて、と、東京、行けなかったら、どお、しよ」

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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時

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