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「なんか冷たくない?及川さんに」
今日の帰りも例のごとく金田一くんと国見くんに送って貰う。今日は三年生の先輩方も二年生の先輩方もいらっしゃらないので、少し気軽だった。元々私が気楽に話せる相手は彼らだけなのだ。部活では少し見栄を張っているだけで。
その質問には少しだけ考えさせられた。適切な解答を模索してから声を出す。
「そ、そう、だね。とりあえず私が私のお友達を悪く言う人は嫌いということは前提に置いておいても、ちょっと苦手、かも」
「へえ、何で?」
自分の先輩を苦手だと言われているのに、国見くんは至って楽しそうに口角を上げた。弱みを握れると言わんばかりの悪い顔だ。
隣の金田一くんなんて健気に「でも及川さんはこういうところが凄くて」と弁解しているというのに。やっぱり彼はいい子だった。国見くんも見習ったらどう?と視線をあげたけれど無駄だった。
「ん……えっと、彼、私のことを影山くんをいじめるのにもってこいの道具だと、思っているでしょう?今はそうでなくても、最初は多分、そうだったと思う。それが今もまだ払拭しきれていないから、苦手なのかな」
「……ふーん、まあ、及川さん性格悪いしね」
「国見くん、金田一くんの顔を見てあげて。私の方が心苦しくなってきたよ……」
せめてフォローに走るだとかしてあげてほしかった。この人全く及川さんを庇おうとしない。
「だから今も、携帯を通じてこの会話を把握しようとしてるでしょう」
「え!?」
「……それ、は、気づかれると、思わなかった」
「自然でいようと気を張っていることが、既に不自然だから……」
とはいえ確信は無かったから今みたいにカマをかけたのだが、どうやら予想は合っていたらしい。彼はポケットに入れていた手を出して、握っていた携帯電話の通話画面を終了させた。
ツー、ツー、と電子音が三回なった時点で、彼は私を見下ろした。眠たそうな目が、まだ楽しそうに光っている。
「神風、怒らせたらヤバい奴だね」
「そ、そう?私、怒ったこと、一回しかないけれど」
「は、そりゃすげえ」
でも、と、ようやく彼は及川さんの弁護に入った。
「あの人も人間だから、ちょっとの恋心に乱されることはあるんだよ」
「分かってるよ、大丈夫。でも何でその話を私にしたの?」
「……駄目かもしれない」
「ば、馬鹿!神風さん、気にしないでいいから!」
「え?な、何が?」
ため息をついて猫背になる国見くんを、金田一くんが車道側に出ないように支えていた。
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時