笑わせないでよ【シルバー】 (ページ29)

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無茶しないでよ。ページ29

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『ただいま戻りました～。』

オクタヴィネル寮に無事帰還出来た。たった４日間の帰省なのに変に緊張する。ジェイドにＶＩＰルームに通して貰った。今はアズールと二人だ。

あれから丸三日宴が続いた。本当やめて欲しい。みんなが涙ながらにAの生還を喜ぶ中、そんなこと口が裂けても言えなかった。今日の朝まで続いた宴を無理矢理締め括り、ほぼ強引に兄と帰ってきた。ジャミルはというと、三日も刺客を気にしてヘトヘトだった。学校とは違い無関係な者がいない為、刺客からすれば絶好のチャンスだった。まあ、運よく誰も被害に遭わなかったが。

Aとカリムを監視する様に言われてたのにカリムが走り回るもんだから、ジャミルと自分はアジーム邸を駆け回って死にかけた。正直あれだけ走ったのに部屋は覚えられなかった。まあそんな感じで、実家帰省も大変だと思った。

「もう十年以上帰っていなかったんでしょう？４日間で良かったんですか？」

アズールは忙しなく書いていた書類の手を止め、Aの方を見た。前より隈が目立っている気がした。

『ええ、もう、十分なくらい頂きましたよ。出席日数も大事だし、あんな所にこれ以上居たらあたしとジャミルが死ぬ。』

「……ああ、ご心労お察ししますよ。」

察しが早いことは良いことだ。シルバーやセベクの鈍さと言ったら……いやいや、すぐアイツらで例えるのはやめよう。引きずりすぎるのは良くない。忘れろ。向こうはとっくに忘れているだろうし。

パァンッ！と大きな音を立て両頬を叩いた。アズールは目を丸くした。Aに素知らぬふりは効かぬ。

「……ど、どうしました？」

『どうしました？じゃない！！あたしがいない間、無理してたでしょう。ちゃんと睡眠とってる？とってないね？』

因みに前の午後授業前以来、二人の時は敬語を使ってない。アズールは一瞬分かりやすくギクッとした後、眼鏡を掛け直した。動揺しすぎだ。

Aはアズールへずかずかと歩み寄った。アズールの顔に手をやり目の下を擦った。化粧でいくらか誤魔化していたようだが本当に隈が濃い。私の手にされるがままに顔を触られるアズールは、本当に疲れていて反抗する気力も湧かないようだった。

『ほら、お化粧で誤魔化してる！無茶しないでよね！心配するんだから！！』

アズールは顔に添えてあるAの手を上から掴んだ。突然のことに驚いて、さっきまで大声で叱っていたのに、急に静かになってしまった。