【歌い手】今宵、愛の言葉は隠された team.B【大型コラボ】 (ページ21)

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ふわふわとほろ酔い状態のセンラさんと一緒に駅までの道を歩く。
普段なら決してみることのない姿を見てしまうと、少しは気を許してもらえているのだろうかなんて
自惚れてしまうのは、私も酔ってるからということにしておきたい。

　
「Aちゃん、家どっちー？」

「こっからだと●●駅まで行ってー」

「それなら俺の最寄からバス出てるからそれ使って一緒帰ろか。」

「そうですねー」

　
センラさんの最寄り駅からのバス……私的には遠回りなのだがせっかく一緒に帰ろうと
言われているんだからそれを断る理由なんてどこにもない。
私だってもうちょっとセンラさんと一緒にいたいのだから。

　
「……あかん。」

「どうしたんですか？」

「俺多分、今電車乗ったらそのままもどす気が……」

「ちょっとそれは困るんで…少し風に当たります？」

「そ、そうするわ…一緒行こ？」

　
確かに若干青ざめたようなセンラさんを見て、首をコテンと傾げる仕草にあざといとか思いながら
まずはコンビニで水を買って渡す。そして、近くにある河原へ向かえば川で冷やされた風が
心地よく吹いていて、酔いを少し冷ましてくれていた。

　
「あー…気持ちえぇなぁ。」

「そですねー」

「Aちゃんは酔っとらんのー？」

「ほろ酔いですよ。」

「ふーん、お酒強いんやねぇ。」

　
そう言って私の頭をぐりぐりと撫でてくるセンラさん。
先ほどからこの人は、狙ってやっているのだろうか…
そんなわけないとは思うが、さすがに普段の彼からは想像つかない姿に
少しだけ、期待してしまう。どんどん好きという気持ちが膨らんでいる。

「……センラさん。」

「んー？」

「また、一緒に出かけましょうね。」

「そうやねー、休みあったら一緒にどっか行こな。」

約束。そう言って彼は笑った。
いつもよりゆったりと流れる時間が、このまま続けばいいのに。
話題がなく、歩くだけでも心地いい幸せなこの時間が
これからもずっと訪れてくれればいいのに。

「…ヘタレやな。」

「ん？何か言いました？」

「あーいや？俺の独り言やから気にせんといて？だいぶ酔いがさめてきたなーって思っただけやから！」

あわてたように否定するセンラさんを不思議に思いながらも
酔いが醒めたならよかったと、笑い返せば彼もまた笑ってくれた。
でも、それならもうすぐこの時間は終わってしまうんだろうな、なんて。

少しの寂しさを感じながら。