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(いまさら、何乙女ぶっているんだろう、私)
もう貴方との未来は残されていないと知りながら、そんな苦しい現実から逃げてしまいたくて、貴方が私をどこか遠くへと連れ出してくれたらだなんて、考えてしまう。
もう貴方に想いを直接伝えることは出来ないけれど、それでも貴方に知ってほしい。もうすぐ、他の人のものになるくせして、貴方との未来を望んでしまう。
そうだ、最初からこの恋は報われないと決まっていたのだ。それでも、それでも私は、
「…ルス、」
「はい、姫様」
私は彼に向かって微笑んだ。
私が抱えているこの想いはあまりにも傲慢だけれど、それでも貴方のことが好きという感情は本物だ。それだけは確かなんだ。
「ルスは、これからも私の騎士でいてくれる？」
「勿論です。俺は貴方だけの騎士です。貴方だけを、お守りします。今までも、これからも」
私の言葉にルスは間をとらずに即答した。
“貴方だけの騎士“
その言葉に、ひどく安心した。この恋が叶わなくたって、ルスは私だけの騎士であり続けてくれる。
そう思えば、先の見えないこれからも、何とかやっていけるような気がした。
「姫様、そろそろお休みになってください。明日に障ります」
彼の言葉を聞いた私の様子を見届けた彼はそう言った。確かに、もう夜も深くなっていた。
「ええ、そうね」と返事をすると「それでは俺は、」とそこまで言ったところでふと、窓に視線を向け、わ、姫様、と私を呼んだ。
「見てください、星が綺麗ですよ」
「え？ｰｰあぁ、ほんとね、すごく綺麗」
彼の視線の先には、夜空を煌めく幾つもの星が散りばめられていた。彼の言う通り、その星は月と同じぐらい、とても綺麗なものだった。
その美しい夜空を眺めながら、私はぼんやりと、彼と出会った日のことを思い出した。
『お初にお目にかかります。この度姫の直属の護衛に任命されました、ルスと申します』
『…貴方が、私の、騎士？』
『はい。貴方だけの、騎士です』
小さな体で私の前に跪いて、そして私に忠誠を誓った、あの日から、ルスは私のことをずっと守ってくれていた。
ねぇ、私のことを守ってくれるなら、私の運命からも守ってよ。そんな戯れ言が声にのることはなかった。
「…やっぱり、気づいていないんですね、姫様」
彼が小さく呟いた言葉に、私は最後まで気づくことが出来なかった。
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