【歌い手】今宵、愛の言葉は隠された team.B【大型コラボ】 (ページ17)

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「…もしかして、緊張しているんですか、姫様？」
「えっ」

私が黙りこくっていたのを緊張と捉えたのかルスはそう聞いてきた。別にそこまで緊張はしていない。これでも一国の姫なのだから、他所の国の王子の元へ嫁いでも恥をかかない程度の振る舞いはできるから。

まだ勘違いを続けているらしいルスはクスッと笑うと瞳をこちらへ向けて、柔らかな口調で話し始めた。

「あちらの王子はかなり優秀で、しかも人望にも長けた方らしいですよ？大丈夫、姫様が不安に思う要素などどこにもありません」
「…」

違うの、そうじゃないの。

相手がどんな人かだなんてどうだっていい。それが貴方じゃないなら意味がない。

「…別に、緊張なんてしていないわ」

やっと言葉を口に出せたが、その声は震えていた。それにルスも気付いたのだろう、「…ほんとうに？」という声が聞こえたかと思うと、スラリと長い脚を少し曲げて、私と目線を合わせてきた。

彼の瞳とぶつかった。それはあまりにも宝石のように綺麗だったからか、私はその瞳に吸い込まれそうだと思った。

「確かに姫様は、王族としての名に相応しい器を持っています。…やけど、それでも俺、心配なんです、貴方のこと。

貴方は、王族としての名を重んじるあまり、決して他者を頼るということをしない。いつも一人で抱え込んでる。分かりますよ、それぐらい。ずっと貴方に仕えてきましたから」

ルスの言葉に、何も返せない。あまりにもその通りだったから。ルスは、私のことを誰よりも理解してくれていた。私が口に出さなくても、気づいてくれるから、そんな貴方だから好きになった。

(…じゃあ、どうしてさっきの言葉には、気づいてくれなかったの？)

我ながら、我儘だなと思った。けど、そう思わずにはいられなかった。
私のことをそこまで理解してくれているのなら、さっきの言葉に隠された意味も、いや、私の想いにも、気づいてほしかった。

たとえその先の結末が覆せないものだとしても、貴方にこの想いに気づかれないまま、私のこの感情さえ何も無かったことにされる方が、辛くて堪らないのだ。