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16、注意喚起 ページ16






総悟の言葉に、私はやけに冷静だった。

土方さんの、揺れた瞳を見て、珍しいな、と思えたほどに。


姉さんとずっと続けてた文通。

誰にも言ってはいけないと言われたその真実が、

きっと、一番知られたくなかったであろう総悟に、土方さんにばれてる。


あぁ、と悟った。


今、婚期を逃しながらも手に入れた一時の幸せ。

ずっと、私たちを思って遠くから煎餅を送っていた姉さんの願い。


あの人は、ずっとここに来たかったんだ。

総悟に、土方さんに、会いたかったんだ。


江戸は過酷だ。


土方さんは冷たいし、空気は汚い。


それでも、姉さんは来たんだ。

今あの人は、幸せの絶頂にいて、その体は、刻一刻と、死へ向かってる。


やってられねーよ、そう言った総悟の口から

総悟の、ミツバ姉さんへの気持ちが溢れ出した。


自分のせいで婚期を逃したと。

今此処で蔵場を殺れば、結局姉さんの幸せを壊してしまうのは自分以外の何物でもないと。


馬鹿だな。そんなことないのに。


土方さんは、総悟がこの気持ちを声に出してしまうことも

きっと、恐れていたはずなのに。



「土方さん、姉上がずっと結婚しなかったのは、アンタのこと…」


「取引は明日の晩だ、刀の手入れしとけよ」


「ひ、じかたさん…!」



総悟から感じ取れる、怒りと、憎しみと、強い悲しみ。


今、此処で総悟に駆け寄るのも、土方さんについていくのも違う気がして、

どうすればいいのか焦ってしまう。


土方さんの愛情は不器用すぎるんだ。


あの純粋で素直な姉さんには厳しすぎる言い方だ。

それでも、あの人は分かってた。

だから、諦めきれなかったんだろうな。



「総悟、あんたは来なくていい。誰にも言わなくていい」


「なんでィ、お前まで。行っちまうのかィ」



はは、と弱々しく笑う総悟に心が痛んだ。


私より年上のくせして、こんな時は子供みたい。


総悟は来ちゃだめだよ。

姉さんのそばに居なきゃ。


誰にも言っちゃだめだよ。

真選組でのあんたの立場、ぐらぐらになるよ。



「私、隊長補佐だけどさ

あんたより立場下だけどさ、今のあんたじゃ無理だよ。これは、隊長補佐からの注意喚起」



嫌な言葉かも、追い打ち掛けたかも。


でもきっと土方さんもそう思ってる。


だから。嘘ついたんでしょ?

取引は今日のはずだ。


全部終わらせて、全部自分でかぶろうとするなら、

部下として、妹として、私が半分抱えてあげる。





17、私達には→←15、ソーセージ



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あい(プロフ) - eight40094さん» コメントありがとうございます!すっごく嬉しいです!これからもよろしくお願いしますー! (2021年2月9日 7時) (レス) id: 7ef5ab0f96 (このIDを非表示/違反報告)
eight40094(プロフ) - あぁ、早く続きが見たいです!忙しいと思いますが、作者様頑張ってください! (2021年2月9日 3時) (レス) id: c00f201ead (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あい | 作成日時:2021年1月30日 23時

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