第百九十八話『キット助カルヨ』 ページ41
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荒い息遣いが聞こえる。
風が頬を当たる。
体が揺れている。
薄ら目を開けると見慣れたネクタイが最初に目に映る。
思わずネクタイを握る。
太「Aちゃ……?起きた……かい?」
少し息の切れた太宰の声が上から聞こえる。
少しづつ意識がハッキリしてくる。
『……ここは』
太「……あと……少しだ」
ふと前を見るとすぐそこに古びた洋館が見えた。
瞬時に理解した。
太宰が芥川を抱えて走っている。
『……太宰さん、僕……歩きます』
太「いいや、駄目だ」
『しかし、僕が……足手まとい』
太「……芥川君」
息の荒い太宰がゆっくりと口を開く。
太「……私から離れるな」
『……はい』
そう返事して俯く。
きっと何を云っても彼は自分を離してくれないだろう。
洋館に到着して驚く。
ミミック兵が二人、頭から血を流して息絶えていた。
『……これは』
太「……っ、急ぐよ」
焦った声の太宰はスピードをあげる。
玄関ホールを抜け、階段を登り、長い渡り廊下をひたすら走る
走って、走って、走った先に────
太「織田作!」
織「太宰……」
太宰は舞踏室に這入り、倒れている友人に駆け寄る。
弾丸は織田の胸を貫通し、床に夥しい血溜まりを作っていた。
明らかに致命傷だ。
『……織田……作……』
織「芥川……か」
太「莫迦だよ織田作。君は大莫迦だ」
織「ああ」
太「こんな奴に付き合って死ぬなんて莫迦だよ」
織「ああ」
芥川は織田作の胸を両手で押える。
しかし血は止まることを知らない。
織「太宰……云っておきたい事がある」
太「駄目だ、止めてくれ。まだ助かるかも知れない。
いや、きっと助かるよ。だからそんな風に」
織「聞け」
織田は血に濡れた手で太宰の手を握った。
織「お前は云ったな。“暴力と流血の世界にいれば
生きる理由が見つかるかもしれない”と……」
『……!』
彼がそんな事を……
と芥川は横にいる蒼白顔の太宰を見る。
太「ああ、云った、云ったがそんな事は今」
織「見つからないよ」
織田は囁きのような声で云った。
太宰は織田を見た。
芥川は強く、強く織田の胸を押した。
そんな事をしても血は止まらなかった。
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第百九十九話『人ヲ救ウ側ニナレ』→←第百九十七話『今ノ君ヲ』
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アニヲタ(プロフ) - 少し遅くなりましたが最近(?)20巻発売されましたね!私はもう…ショックが酷くて読んだ後一週間位病んでました笑更新再開ずっと気長に待ってます!無理の無いご自分のペースで書いてくださいね…!ずっとずっと待ってます! (2021年1月11日 22時) (レス) id: 71f36505fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» いえいえ、リクがありましたら可能な限り受け付けます。お時間が掛かるかもしれませんが、、、でっぷるは映画で一度見たきりなのであまり詳しく覚えてないです、、小説は友人に貸して帰ってこないんですよ笑 (2020年7月30日 3時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - 厭々!!!リク受けて下さるだけでも十分過ぎるのにぃ…マジで有難う御座います…!実は私もでっぷる編全く、これっぽちも知らんのですよねぇ...。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» コメントありがとうございます。でっぷる編ですが今、手元に小説がない状況でして書くことが出来ないんです、申し訳ないです、、、リク希望ありがとうございます。時間が掛かるかもしれませんが、受付致します。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - あのぅ…でっぷる編書くご予定はありますでしょうか…?若し無ければリクをしたいのですが… (2020年7月28日 14時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年3月16日 21時