漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百九十六話『薙ギ払エ』 ページ39

芥川は首を傾げた｡
何やら太宰の様子が可笑しい｡
否､可笑しいのはいつもだが､今日は特に違和感が……




太｢……芥川君｣



『……はい』



太｢君は急いでこの場所に向かって欲しい｣




紙切れを渡されて中を見る｡
場所はそう遠くないが森の奥深くにある場所だ｡
ゆっくりと太宰を見る｡




『……何故ですか』



太｢……織田作がいる｣




そこで全てが繋がった｡

太宰が何故､こんなにも暗いのか｡

この森深くに織田作が居るのか｡


簡単だ､ミミックの住処に一人で向かったのだ｡




『……承知しました！直ぐに……』




振り返り扉へと向かおうとした時だ｡
黒服が何処からともなく現れて芥川に銃口を向けた｡




『……退いてくれ』




静かに告げるが彼等は微動だにしない｡
太宰に視線を向けるが､彼は眉を顰めていた｡




森｢……彼を捕らえろ｣



『……なっ』




黒服が一斉に襲いかかってきた｡
仲間を攻撃することの出来ない芥川は驚くだけ｡




太｢芥川君！｣




太宰が叫ぶも既に遅し｡
芥川は数名の黒服に取り押さえられていた｡




『……っ､これは……何故……』



太｢君達､芥川君を離せ｡今すぐに｣




太宰が殺気を込めて云うが効果は無し｡
森は微笑んで一言云った｡




森｢……彼を例の場所へ連れて行きなさい｣



太｢首領､芥川君は私の……｣



森｢幹部である君が首領である私に逆らうのかい？｣



『……！おいっ！離せ！僕は……！僕は……』



太｢……っ､芥川君！｣




……今､ここで動かなければ後悔する｡


大切なモノが失われてしまう気がする｡


……嫌だ､もう……何も……何一つ､失っては……




────｢愚かな｣




……ドクンッ




聞いた事のある声が頭の中で響いた｡




────｢太宰さんの命だ､遂行しろ｣




誰だ？


一体お前は誰なんだ？




────｢……こんな軟弱者に取り押さえられるな｣




『……っ』




ポタリと涙が一粒落ちる｡




────｢僕はもう……弱くなどない｣




羅生門がゆっくり揺らめく｡




『────薙ぎ払え』




羅生門が太宰と森以外の人物を捕らえ､壁に打ちつけた｡





『……あっ』




芥川の目が戸惑いに変わった｡


足に力が入らなくなり床にへたり込む｡


太宰は直ぐに彼女に駆け寄った｡




『だ､ざ……だざぁ……ん……』



太｢……大丈夫､大丈夫だよ｣




その言葉に芥川は驚愕と悲しみの眼差しで太宰を見詰めた｡


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