雨【フィーナ】 ページ15
しとしと、しとしと、静かに雨が地に降り注いでいた。
「……今日は庭で遊ぶことができませんね。」
フィーナはそんな外の様子を見ながら小さくため息を溢した。こんな雨では、外で遊ぶこと以前に洗濯を干すことも、買い物に出かけることも難しい。
なにより、フィーナの身体はジクジクと鈍い痛みを伴っていた。
昔、誰かに傷つけられた背中が痛んだ。シスター服で隠されたその傷を見たものは僅かだが、それは生半可なものではない。
生涯、消えることのない傷跡として時に彼女に痛みを与え、見た人々の顔を歪めるものであった。
大聖堂のステンドグラスを丁寧に磨き上げながら痛みに耐える。ふと、フィーナは大聖堂に飾られた神を模した像と目があった気がした。
「_____主よ、日々の幸せに感謝を。救いの手に敬愛を。我らは皆、神の子。隣人を愛し、我が身を持って導きます。」
祈りの言葉を捧げ、静かに目を閉じる。
この瞬間がフィーナにとって何よりも特別で、かけがえの無い、大切なものであった。
翼を折られ、鎖に繋がれ二度と自由を得ることは願わないと思った過去がある。しかし、偶然にも大司教であるジゼラ・ヘルファムに助けられ、神に出会うことができた。
昔の彼女には考えることもなかった幸せが今の日常にはあった。全ては神の力によるもの。神を尊び、敬愛する我らに救いの手を差し伸べてくださったからこそのもの。
だからこそ、熱心に彼女は神に祈りを捧げる。側からみれば狂気を感じるものもいるかもしれない。
彼女の優しさに隠された妄信的なまでの神への愛は知られることはないだろう。
「フィーナさん、手伝おっかー?」
再びステンドグラスの掃除を再開したフィーナに、声がかけられた。ゆるい話し方でどこか生気が感じられる可愛らしい声。
ふと振り向くと水の妖精であるサロメが、ふわふわと浮きながらこちらを見ていた。
「あら?今日はお出かけと言っていませんでしたか?」
昨日、嬉しそうに外出することを報告してくれたサロメだったが今はつまらなさそうに口を曲げている。
「まじでそれー。ホントならハンナさんとお出かけするはずだったんだけど。」
生憎の雨だし、諦めたんだぁ。と肩を深く落とし大きなため息を吐く。
「きっと、神の御心ですわ。また今度行ったほうがいいということですよ。」
そんなサロメにふんわりと笑ってみせたフィーナは、手伝いを申し出てくれた彼女の手を借りて掃除を行うのだった。
優雅なディナー【クワイヤ・スカーレット】→←赦さない【アダム・フェアラート】
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開(プロフ) - いろいろな作品更新されたあとありますがPCが重くて間違えて触ってしまい更新された状態になってしまいました申し訳ないです、、一応触ってしまっただけなのでみなさまの文章に言葉が欠ける、増えるなどは無いです申し訳ありません (2022年3月21日 7時) (レス) id: 62c5ad2de3 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 作者様を巻き込みたくないので出来れば他の作者のCSSに変えた方が良いと思います (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
理紗@プロフ一部更新(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。私のCSSを変えていただけないでしょうか?どうやら再配布禁止の画像を使っていたので申し訳ないですが。大変ご迷惑をかけしました。全部が違反した分けではないのですが保証も出来ないのでよろしくお願いします。 (2021年3月3日 2時) (レス) id: c9fefc2be8 (このIDを非表示/違反報告)
流離いのsecret(プロフ) - Melcheさん» 更新お疲れ様でした! シャルルさんとテレーゼさんは前からのお知り合いだったんですね。それにしても、シャルルさん視点のお話、面白いですよね笑 軽快な書き方がとても好きです! (2021年2月22日 23時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
Melche(プロフ) - 更新終わりました!最後のオチが上手くいかなすぎて泣きそうになりました() (2021年2月21日 20時) (レス) id: 10c523e9ad (このIDを非表示/違反報告)
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