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(hidaka-side)
「アンコールどうもありがとうございます!!」
アンコール後のMC。
詩は改めて、何度も客席に向かって頭を下げて。
「本当に…長かったツアーも過ぎてみるとあっという間で、残すは後数曲です」
少し寂しげに、だけど幸せそうに呟いてから。「さて」と明るい調子に声音が変わる。
「実は、最終公演限定で………………新曲を披露したいと思います!」
「「「きゃー!!!」」」
「ライブ終了後に配信リリースもされますので、この後聴いて気に入った方は、是非ダウンロードして頂けると嬉しいです」
ふふ、と笑った詩は新曲について紹介する。
「今回の曲のテーマは、‘家族’です」
話し始めた瞬間に、客席がシンと静まり返って。
その場にいる皆が詩の話に集中する。
「若干知ってる人もいるかもしれないけど……私の家には母親と、兄がいました」
俺らメンバーも知ってるけど、固唾を飲んで見守る。
「勿論父親もいるけど、私は顔も知りません」
チラリと横目で見ると、詩のお母さんは無表情で見ていた。
「普通の家に比べたらちょっと違うところもあったかもしれないけど、私にとっては大切な家族です」
まっすぐに、優しくも真剣な眼差しで前を見つめた詩が告げる。
「そんな家族を想って作った曲です。聴いてください。‘home’」
優しい印象を抱く前奏。
歌い始めた詩の歌声は、苦しいくらい胸に突き刺さってきて。
──本当に昔から、詩の音楽は変わらない
曲作りも、作詞も。
才能だけで言えば、もっと天才レベルは世界にゴロゴロいるだろう。
特別専門的に勉強してきたわけでもない詩の作る曲には、未だに何処か拙さすら感じるときだってある。
……でも、詩の歌は人を引き付ける何かがある。
感情まるごとぶつけてこられるような、詩の世界に引き込まれていくような感覚。
──だから、詩の音楽の虜になる人は多いんだろう
それは。
アーティストとしては羨ましい才能。
──どうか、
だからこそ、願う。
──どうか、この気持ちが‘この人’にもまっすぐ伝わりますように
相変わらず感情を見せない表情で、だけど彼女は目を逸らすことなく、娘が歌う姿を見つめていた。
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海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます!楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…!本当にありがとうございます!マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです!!昨日から一気に読んでしまいました!これからも楽しみにしてますね! (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海 | 作成日時:2019年3月24日 19時