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母さんはいつもニコニコと笑っていた。どんな事があってもいつも笑っていた。親戚の人たちが外で母のことを"気味が悪い"と囁いていたのも知っていた。

母さんが入院したのは小学生低学年の頃だった。
友達も誰もいらないから、母さんに帰ってきて欲しくて、何枚も何枚も手紙を書いた。父と2人のご飯はどうにも味気なくて、美味しくなかった。

父は疲れた顔をしてオレの学校の話を聞いてくれた。要領の良かった父も、1人で育児と仕事をするのが大変だったのだと今なら分かる。その頃クソガキだったオレは、まあそんなこと気が付けなかったわけで。

まぁ、オレは元々はいかにも大人が面倒くさがるうるさいクソガキだったわけで。泣きたくなったらすぐ泣くし、癪に障るとすぐに癇癪を起こして切れるし、思ったこともすぐに口から出てしまう無遠慮で躾のなってないようなクソガキだよ、ほんと。
良くも悪くも感情的だった。直ぐに考えてる事は顔に出るし、行動も言葉も安直だった。


母が病室で亡くなったときの第一声は"なんで母さん寝てるの?"だったくらいだ。分別のないクソガキだよ。その時の父の見開いた血走った瞳は今でも忘れられない。その場でオレの首を絞めかねない目付きだったと思う。


それから父は目に見えて変わっていった。葬式のときまではギリギリ保っていたが、母さんの葬式が終わった頃にはもう確実におかしくなってしまっていた。
真っ暗な部屋で母の若い頃の写真を見て、笑っては泣いてを繰り返す。それに疲れたら倒れるように眠りにつき、起きればまた写真を指でなぞり、気味の悪い笑みを浮かべた後にまた涙を流した。そんな日が何度も続いた。

オレが声をかけると返事はなかったのをよく覚えている。
父がオレのいない間に机に置いたと思われるお金を持って、学校帰りにインスタントの食事やカップ麺を買って帰った。やっぱり何を食べても味気なくて美味しくなかった。

そんな生活を見かねた親戚?のおっさんが、父を病院に連れていった。今考えれば精神科だったんだろうと思う。

その時におっさんがオレを見るなり、「お母さんに似てきたな」と笑ったのを覚えていた。

病院に通い、おかしな状態から時間が経って回復し、少しずつ生活が戻り始めた。それがだいたい中学生の頃の話。中学生にもなるとプライドができてきて今まで素直に感情を剥き出しだったオレも多少なりとも取り繕うようになっていた。

□→←□ 伊吹チグサの手記



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元素(プロフ) - CS提出ありがとうございます!気怠い警察官最高ですね……不備等ございませんのでこのまま受理させていただきます!今後も当企画をお楽しみください! (2022年6月22日 20時) (レス) @page9 id: 656d2fa00c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:兎依 | 作成日時:2022年6月22日 13時

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