【深海のまち】世界を愛する瞬間に【 CS 】 (ページ17)

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【過去】

彼女の家は、彼女の父の雪見白夜、母の兎羽、そして娘の白兎の3人家族。白兎は一人っ子。
名前は父と母の名前から1文字ずつ取っている。名前の由来は、真っ白な髪に、赤色木の実のような瞳が白うさぎのようだという理由から。また、彼女の生まれた日が、とても綺麗な満月の夜で、母がその明るく美しい月を見て「満月では兎がお餅をついている」という話を思い出したから。そんな些細な理由から白兎と名付けられ、大切に育てられてきた。ちなみに、そんな理由で、と他人には言われてしまうかもしれないが、本人はこの名前をとても気に入っている。白兎曰く「月に住んでる兎さんが由来のひとつなんてかっこいい…！パパとママの名前から来てる名前って、家族って感じがして素敵でしょ？」とのこと。自分の名前が大好き。

彼女には生まれつきの持病があり、一般的な健康状態の人よりも肺が弱かった。そのため、昔から病院に入院しては退院して、入院しては退院してを何度も繰り返していた。両親には昔から周りの子以上に心配をかけている上に、迷惑をかけているという意識が彼女の中では入退院を繰り返す度に膨らんでいった。

いつも笑っている母は本当は自分のことを恨んでいるのではないかと思っていた。優しい声で私の名前を呼んでくれる父は私のことを邪魔だと思っているのではないかと思っていた。

中学3年生になる頃には病気も少しずつ落ち着いていき、無事高校受験にも合格。学校にあまり通うことができなかったこともあり、勉強は出来なかったので、入れた学校は決して頭のいい学校だった訳ではないが、明るく自由な校風の学校に進学できることになった。かわいい水色と白のセーラー服。クローゼットを開ける度にセーラー服が目に入り、口元が緩くなってしまう。

病気がちで、中学校も通った日数を合計すれば1年くらいしか通えてなかった彼女には、友達と呼べる人が少なかった。いなかったわけではないが、どこか自分は人よりも劣っているところがあるからか、何となく壁を感じてしまっていた。
だからこそ、これから新しい高校で新しい友達を作って、楽しい学校生活を送るということが、楽しみで楽しみで仕方なかった。

真新しい新品のセーラー服。かわいくてかわいくて仕方なくてくるくると姿見の前で何度も回る。入学式ではたくさんの人と話せて、既に友達になれそうな人が沢山いた。彼女の青春は少し遅れてやっと始まった。