“魔王” ページ22
「…はぁ」
溜息をついた東矢の脳内で、今まで聞いてきた魔王のことがグルグルと回転する。
…結局、今まで自分が何をすればよいのかわからないままだ。
ただ、一つ思ったことがある。
解ったことがある。
やりたいと、いや、やるべきだと思ったことがある。
…重厚な扉をノックし、開く。
「おうアンタか。どうした?」
「…マールド、話があるんだ」
相変わらず椅子に座り何かを確認していた彼の目線が、すぐに東矢へと向いた。
「おう、何だ?」
「…俺を、ここで働かせてくれ。頼む、お願いします」
「…は?」
ぽかんとするマールドの手前、腰を直角に曲げ綺麗なお辞儀を見せて懇願する。
程なくして正気に返ったマールドが、その真意を問い返した。
「…ちょっと待て、どういうことだ」
「俺は、お前達のことが知りたい。何のために戦うのか。そしてそれを見て俺は何をすべきなのか。俺自身の天命を、探したいんだ」
「…そうか」
それを聞いて納得した様子のマールドが一つ溜息をつき、席を立つ。
「…顔上げろよ」
「…」
真正面から、マールドを見つめる。
硬い決意の籠った、熱い目だった。
「…まぁ、そんな大層なもんじゃないんだけどなぁ…いいぜ、来たかったら来いよ。歓迎するぜ」
「…!あぁ!これから頼む」
差し出された手を掴み、東矢が正式に魔王の元へと留まることになった。
決して彼は悪に染まった訳ではない。
マールドが己が従うに相応しい相手だと認めたから。
彼の信念を、もっと知りたいと思ったから。
己の進むべき道が、その延長線上に見つかると思ったから。
彼は頭を下げた。
素直にその手を取った。
“勇者”という使命を捨て、真に為すべきことを探す為。
魔王との邂逅は、確かに勇者を少し違う方向へと導くことになるだろう。
その先に何が待っているか、魔王自身もわからない。
ただ、少なくとも東矢はこの選択を後悔していなかった。
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クロロフィル@リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます!これからも更新頑張りますね! (2023年1月14日 20時) (レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2022年12月29日 21時