回復 ページ14
「…大分日が傾いてきてるな…寝るか…?」
窓から見える景色は夕焼けに染まりつつあり、もうそろそろ夜が来るのだろう。
体が痛んで動かせない以上、このまま眠るしかなさそうだ。
「…、駄目だな、そうだここは敵城なんだ」
そう、ここは間違っても自分のとった宿ではない。
魔王の城なのだ。
…なのだが。
「…ッ、クッソ…眠気が…」
明らかに自身の家の物よりも寝心地の良いベッド。
清潔感溢れる部屋。
窓から差し込む、柔らかで消えゆきそうな光。
…ここで眠っては不味いと思いながらも、自然と微睡んでくる。
…その瞼が閉じ切るまで、そう時間はかからなかった。
――――――――――
ふと、柔らかな植物の香りが鼻腔を擽った。
「…ん?」
自然と覚醒したその意識からは、明らかに何かが抜け落ちていた。
そう。
「…怪我が…もう治ってる、だと…!?」
東矢自身、回復魔法は扱えないし、王宮にたまたま暫く通っていた所で掛けられた低級の魔法以外に体験したことがない。
しかし…ここまで治りが早いものなのかと驚愕する。
骨折こそないとはいえ、全身が痛むほどの傷を負っていた筈なのに。
ただ一晩寝ただけで回復してしまった。
恐ろしい魔力だと思いながらも、周囲を見渡せば一人の少年が布団にもたれかかるようにして寝ていた。
アルマだ。
「…アルマ?」
「んぅ…?えっ」
そう呼びかけたところで目が覚めたのか、暫く固まってから飛び起きた。
「え…あ…え…ご、ごめんなさい…!」
「ちょっ、いいって!謝らなくていいから!」
慌てた様子で謝罪しようとするアルマを宥め、事情を訊く。
「えっと…今日は僕が監視担当で…」
監視、という単語で東矢はすんなりと納得した。
まぁ、いつ起きて魔王の暗殺を実行でもしようとしないか見ておく必要があったのだろう。
結局勇者と魔王なのだ、と考えたのだが、続いたアルマの言葉で一気に現実へと引き戻された。
「…マールドさんが…草薙さんのことちょっと心配なんだって…魔法かけてるけど大丈夫なのかって…」
「…は?」
…やっぱりこの魔王、全くよくわからない。
そう、心の中で呟いたのであった。
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クロロフィル@リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます!これからも更新頑張りますね! (2023年1月14日 20時) (レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2022年12月29日 21時