勇者の決断 ページ13
…その言葉を聞いた東矢が黙り込む。
「…ま、そういうこった。無理に結論を急ぐ必要はねぇよ。」
ゆっくりと考えるんだな、とだけ言い残し、マールドは部屋を去っていった。
「ねぇちょっと!?私このままなの!?」
「お前は暫く独房で反省してろ」
「なんでよ!?」
…部屋の外でそんなやり取りが聞こえたのだが、無視することにした。
あれはきっと幻聴だ。
色々あり過ぎて疲れているんだ。
…そう、思い込むことにした。
「…結局、“勇者”って何なんだろうな」
東矢の頭に真っ先に浮かんだのは、やっぱりその疑問であった。
今までの自分にとって、勇者とは“世界を救う力を持つ者”であり、“人類を脅かす魔王を討ち取る者”であった。
「…やっぱ違うよな…」
しかし、今の東矢にとって、勇者とは必ずしもそうではない。
文字通り取るなら、勇気のある者。
…強いて言うなら、世界を救済すべく戦える者、なのだろうか。
あの魔王が何を考えているかなんて知らない。
ただ東矢の目には彼が世界征服などを企むようなそんな野蛮な男ではないことだけがわかっていた。
「…なら、魔王って何だ?」
人類から見たイメージとしては、まさに“世界を大混乱に追いやる諸悪の根源”。
ただ…本来の意味を汲み取るのであれば、ただ単に“魔族を統べる王”であるだけだ。
別に、そこに悪のイメージなどない。
「…結局、人間のエゴなのかねぇ…」
やはり、本来の意味とは違った方向へと勝手に曲げられた末に今のような対立が生まれているのではないか。
現に、恐らく巧やアルマといった魔王側の人間は、魔物を憎んでいるようには見えなかった。
そして反対に、人間のことを恨み嫌っている様子もなかった。
「…何なんだ…?」
しかし相変わらず傷は痛む。
ひとまず全快まで休んでから、本人達に聞いてみるのが一番早いと判断し、ひとまず運ばれてきた白湯をゆっくりと飲むのであった。
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クロロフィル@リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます!これからも更新頑張りますね! (2023年1月14日 20時) (レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2022年12月29日 21時