魔王の見解 ページ12
「…で、結局この後どうすんだ?」
「どうするって言ってもな…」
腕を組み、考え込み始めるマールド。
とても先日のような威圧感とカリスマ溢れる魔王と同一人物だとは思えない。
「俺は勇者、お前は魔王。お互い憎み合って殺し合う運命じゃないのか?」
そう疑問をぶつけるも、返ってきたのは…
「…なぁ、どうしてアンタはそんなに“立場”に拘るんだ?」
「…は?」
そんな、疑問なのであった。
「別にさ、魔物だとか人間だとか関係ないと思うんだよ。どうして異種族同士で争わなきゃならないのかってな。いっつも思ってたんだ」
「…考えたこともなかったな」
今まで、自然と魔物=悪だと思い込んでいた節があった。
それは人間界においては常識であり、疑問すら抱かない当然のことであった。
そして、東矢もまた、それは同じであった。
ただ、人一倍優しかっただけなのだ。
それでも彼が魔物を無意識に一概に悪だと決め付けていたことは事実である。
「だろ?アンタら凝り固まりすぎなんだよ」
「確かに…」
「それに、こっちには結構魔物以外の奴がいるぞ?アルマとかソーラとかフールとか」
「それもそうだな…」
ソーラはエルフ、フールはドワーフ。
仲はお世辞にもいいとは言えない両種の筈なのに、彼らは何も気にすることなくお互いを想い合っている。
そして、巧とアルマ、リーファとオシストも。
彼らは間違いなく人間だ。
何故魔物を憎んでいる筈の人間や亜人なのに魔物の肩を持っているのか。
考えたこともなかったが、確かによくよく考えてみればおかしなことだ。
「…結局な、怖いのは思い込みなんだ。“魔物は悪”だとか、“人間こそ正義”とか…そんなことが当たり前だと思い込んでるから、こんなことになっちまってるんじゃないのかってな」
不思議なことに、その意見に納得している自分がいる。
人間界の間だってそうだ。
本当は何も悪くないのに、裏切り者のレッテルを貼られ、不遇な扱いをされた者を、東矢は知っている。
何せ、東矢に勇者の才がなければそうなっていたのは自分だったのだから。
そういった立場の人物のことはよく知っている。
「…俺は、どうすればいいんだろうな」
ふと、そんなことを口走る。
勇者とは思えないような、弱気な発言に対し、マールドの返答は。
「知るか。」
…は?と口をあんぐりと開ける東矢に、マールドは続ける。
「好きに生きればいいんじゃないか?何にも縛られず、自分のやりたいようにさ。
与えられたもんを受け入れて生きていくのも悪くないぜ?」
その微笑みには、まさに東矢に足りない物が込められていた。
勇者としての責務に苦しむ男への救済の手が、そこにはあった。
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クロロフィル@リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます!これからも更新頑張りますね! (2023年1月14日 20時) (レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ:http
作成日時:2022年12月29日 21時