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『いでっ、』
背中と腕がビキビキと痛い。
今思えば、階段だから突き落とされる可能性もあったのか。不幸中の幸い……
『どこが幸いだよ……』
掠れた自分の声は、静かな虚しい空気に溶け込む。
私は正論を言ったはず。いや、言った。
知らん人が勝手に自分の連絡先知られてたら怖いやろ。侑と治やったら絶対キレるし、仮に私が教えたら私の命がない。
『マジで理不尽過ぎる…私悪くないじゃん、』
誰もいないのを良い気に思ったことを口に出す。ていうか出さないと無理。
『そもそも私の名前も知らんくせに話しかけてくんなよ、何が妹ちゃんだよッ名前ダサすぎやわくそ…』
結局知らん人は皆私を"妹"呼ばわりする。
私は妹やけど、そんな名前やない。
慣れたっちゃ慣れたけどやっぱり嫌なものは嫌や。
『…、うっ………何泣いとんねんアホ、』
手の甲にぽたぽたと涙が落ちるが、口は止まらない。
『ぽんこつ、あほ、意気地無し、…』
こんなこと考えたって何にもならない。
考えるな、考えるな。
北さんにたくさん励まされたやん。
あかん、ネガティブになんな。
ゴシゴシと目をこするが、涙は言うことを聞かないかのように溢れ出る。
『せめて名前くらい…覚えろやあほ、』
北さんに会いたい。
でも今はあかん。大事な大会前やから迷惑かけたらあかん。
落ち着くまでここにおろう。
.
『んっ、……』
やば、気がつけば寝てしまった。
寝起きでスマホを見ると、なんと時刻は7時過ぎ。
『…最悪や……』
目はきっと死ぬほど腫れてると思うし、何だか体もだるい。あと背中が痛い。
思い出したら、また涙がじわじわと溢れてくる。
我ながら弱いなぁ…。
むくりと起き上がって頭をガシガシとかく。
何やろ、今は何もしたくない。動きたくない。
ため息をはきながら、スマホを開くととんでもない数の不在着信。
『え、何で……』
北さんからも何件かあるけど
それ以上に
侑からの不在着信の数がすごい。
『………』
ここ最近の侑は本当にわからない。
一体何がしたいのやら。治がわからないなら私には絶対にわからない。
考える気も失せて、スマホの電源を切る。
『何で私ばっかこーなんねん…』
体育座りをして蹲っていると、頭に重みを感じた。
「…はぁっ、やっと、見つけた。」
この声
北さんやない。
何で
『……ぁ、つむ…』
.
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さっちゃん - めっちゃ面白かった!なんかもう、言葉にならない…。感動😭 (4月24日 20時) (レス) @page50 id: c5a0fb1f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいも - めっちゃ面白かったです!感動して泣きかけました...!神作を有難うございました!! (4月20日 18時) (レス) @page50 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
こめつぶ(プロフ) - めっちゃ神作でした…!!!親と兄弟が目の前にいるのに何度も涙出そうになって、めっちゃ堪えました。本当に素敵な作品、ありがとうございます!!!!多分これからもリピートさせていただくと思います!!(() (4月8日 16時) (レス) @page50 id: e94f7d2b88 (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 神作ッ!!!主様天才すぎます。3周目に突入したのに涙が... (4月4日 0時) (レス) @page47 id: d24603059d (このIDを非表示/違反報告)
赤羽 - なるほどなぁ、、神、 (4月3日 1時) (レス) @page50 id: b22b7ccd76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:にろ | 作成日時:2020年5月17日 14時