硬貨6枚 ページ7
『…………商品価値、下がるかなぁ』
自室の風呂場にて、Aは鏡の前で肌を撫でた。
腰や腕についた赤い跡に顔をしかめる。相手からしたら不本意だとわかっていても、嫌なものは嫌なのだ。
怒られるかなぁ、なんてぼんやり考える。
今から相手をする人は大人で、政治家。温厚な人。傷跡も基本的には気にしないタイプ。
怒られはしないだろうけどいい気にはならないと予想した。
『…ま、いっか。早く準備しよっと』
体を拭いて、年相応の服に腕を通す。
全部パパからのもらいもの。
ここの部屋に自費で買ったものはほぼない。強いて言うなら筆記用具くらい。
財布とポーチとスマホとバッテリー。その他必要な物をミニバッグに放り込む。
それを肩にかけて、外泊届にペンを走らせた。
次いで、寮長であるレオナの部屋へと足を踏み入れる。
まさかこんなにも汚いとは………オウサマってやつは身の回りのことをやらないのだろうか?なんて怪訝な顔をしながら考える。
まぁいいや、と適当にベッドの上に紙を置いた。
部活から帰ってきたら気付くだろう。1番最初にベッドに向かいそうだし。
『…忘れ物無し、身だしなみもおっけぃ』
鏡を抜けて、待ち合わせのカフェに入る。
夕方ということもあり、店内は学生で賑わっていた。
飲み物を注文して、スマホをいじりながら暇を潰す。
「ごめんね、遅くなって」
視線を上げればスーツ姿の中年男性が申し訳なさそうに笑っていた。
待ち合わせの予定の人。40代、未婚者。所謂Aの太客だ。
年齢の割には若々しく、比較的ちゃんとしている。未成年に手を出している時点でちゃんとしていないが。
『ううん、全然待ってないよ!お仕事お疲れ様、パパ!』
待ちわびた相手の顔を見て、完璧な笑みを浮かべた。
遅ぇよ、待たせんな。なんて言葉は飲み込んで。
『パパも休憩する?それともご飯?』
「…いや、予約まで時間あるから買い物でも行こうか」
『わーい!行く!』
パパの手を引き、伝票を持ってレジへと歩く。
奢る、とのことだったため言葉に甘えて店を出た。
学校であったことなどを楽しそうに話せば、相手は幸せそうに微笑んでいた。
傍から見れば仲のいい家族だろう。
実際は、金銭のみで繋がった関係だが。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです!!ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく読んでいて楽しい作品でした!またどこかで貴方様の作品に出会えますように(^ν^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください!応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます!お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか? (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高! (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諒 | 作成日時:2020年8月2日 13時