硬貨16枚 ページ17
『遅れてごめんなさい…!掃除当番が長引いちゃって…!』
汗を拭いながら、膝に手をつく。
教室のドアを開けると、1人の生徒が肩を跳ねさせた。
「い、いや!だ、大丈夫!待ってないよ、全然、うん……!」
『うぅ、先輩との時間短くなっちゃった…』
ぺたん、と耳が垂れる。しっぽも下がっていた。
前々から約束していた、放課後の勉強。
勉学に長けたオクタヴィネル、スカラビア寮生でなく、イグニハイド寮生に頼んで時間を割いてもらった。
窓際、陽の差す席に隣り合わせで座る。
机の上に魔法史の教材を広げてペンを手にとった。
「え、っと、聞きたいのどこだっけ?」
『ここです、ここの流れがよくわからなくて…年号も混ざっちゃうし…』
「あ、ぁ、そこね、えっと」
適度に相槌を打ちながらノートや資料集にメモを取る。
時代背景や語呂合わせ等を深く広く教えてくれた。どもることも多いが、特にAは気にせず相槌を打つ。
元々勉強は好きだった。
"知識は財産と同価値"と母親に教えられていたから。何もない自分が、唯一人と同等だったのものが学だった。
時間と効率の良ささえ持ち合わせていれば、いくらでも人の上に立てる。
幼い頃からたくさん活字を読み、様々な知識を身につけた。
興味のない教育を無理矢理与えられるより、興味のある教育を自分から求める方が自分に合っていると知った。
だからこうして、わざわざ人に頼んで詳しく教えてもらっている。
流石に授業だけでは不十分だ。
1つの知識に長けたイグニハイド寮生に頼んだ。校内で出席率の高い生徒を探し回って、直接話して。
他の寮生の知識は、浅く幅広いから。自分の好きなことについてとことん知り尽くしているイグニハイド寮生の方がお互い都合がいい。
向こうはマイナーな知識を人に話せることが楽しい。Aは習ったことの奥の奥まで知りたい。
事実、こういう時間は充実していた。
『裏側を知るって面白いですね!先生の話聞くよりも先輩の話聞いてる方が楽しいなぁ』
「そ、そう?僕でよければ、いつでも、」
『本当?じゃあまたお願いしようかな』
明るく微笑むと、相手は顔を赤く染めた。
もちろん、約束するのも忘れずに。
その場でお開きになり、1人教室で、スケジュール帳に書き込む。
やっぱりイグニハイドの寮生はいい。
推しに貢ぐ感覚で、何度も求めてくれる。
今週も財布が潤いそうだ。
紅い唇は緩く弧を描いた。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです!!ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく読んでいて楽しい作品でした!またどこかで貴方様の作品に出会えますように(^ν^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください!応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます!お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか? (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高! (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諒 | 作成日時:2020年8月2日 13時