第67話 ページ22
驚いたようにこちらを見つめる燭台切になんだか恥ずかしくなって、頬をかきながらそっと視線を逸らした。
「あ〜…っと、オムライスね、オムライス。
うん、実は食べたことないんだ」
「そうだったんだね。
好きな食べ物は何かある？」
隣に座る長義のオムライスも切り開きながら、そう問うてきた燭台切に首をかしげて唸る。
「うぅ〜ん…そうだなぁ…あ、梅干しのお粥は結構好きだったな」
「お、お粥…？」
次は正面に座る三日月のオムライスも切り開く燭台切は、僕の返答に素っ頓狂な声を上げた。
それに対し、オムライスに赤いソースを垂らす長義が代わりに答える。
「政府に保護されて間もなくの彼は、栄養失調が酷くて胃腸も弱くてね。
だから、審神者として生かすことが決まってからは、粥とかすりおろした芋とかから食べさせていたんだよ」
説明する間に長義は、僕のオムライスにも少なめに赤いソースをかけてくれた。
今気づいたけどこれあれか、ケチャップか。
先輩がよく揚げた芋につけて食べてたな…
食欲をそそる酸っぱい匂いにごくりと唾を飲み込んでいると、燭台切が絶望したような顔で唇を震わせた。
「えぇっ!?そうなの!?ど、どうしよう、オムライスじゃちょっと重いよね!?」
「問題ないよ。少しずつ固形物も増やしていって、最近は食べる量も増えたみたいだからね」
「うん、大丈夫！昨日ここに来る前に唐揚げ定食食べてきたし！」
ぶいっ！とピースして燭台切に見せつけると、彼はホッとしたように胸を撫で下ろした。
唐揚げ定食、美味しかったな…三分の一しか食べられなくて、残りは先輩に食べてもらったけど。
でも、最初の頃みたいにお腹痛くなったり気持ち悪くなったりしなかったし。成長成長。
いただきます、と手を合わせて食べ始めた長義を横目に、そういえばと一向に席につかない燭台切と長谷部を見やる。
「二人は食べないの？」
「あぁ、僕たちは向こうの食堂の方で食べるよ。
本当は一緒に食べたかったけど…ごめんね」
「俺は、余所者と食卓を囲みたくは無いがな」
「もーっ長谷部くん！どうしてそんなこと言うの！」
腕を組んで冷たく言い放つ長谷部に、燭台切が幼子を叱るように迫る。
燭台切と一緒に僕らのご飯を用意してくれていたから、少しは認めてくれたかと思ったけど、そんな事ないみたいだな…
言い争う二振りをまぁまぁと宥め、「わざわざこっちに作りに来てくれてありがとうね」と感謝した。
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年11月1日 19時
