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*
「……、A、起きれる?A」
日が傾き始め、まだ薄い橙色の光が淡く誇りを照らしていた。お天道様の匂いが鼻腔を掠めて目が冴える。
『…?乱歩、さん?』
「その通り、君の旦那の江戸川乱歩だよ〜」
重い瞼を擦って見上げると乱歩さんが私を覗き込んでいる。暖かい匂いは乱歩さんの外套だったのか。
もう一度スン、と匂いを嗅ぐとやはりお日様の匂いがした。
「いつも僕にセクハラだのなんだの訴えるけど、君のそれはどうなの?」
『、?今何時ですか?』
「本当に治ったら覚えておくことだね。今は十六時前」
額に手を当てて体温を確認する動作をとると、乱歩さんはいかにも嫌そうな顔をして溜息を着いた。
「今はとっくに解熱剤は切れている時間だよ。身体は怠いか?体温計何処だっけ」
『少し怠いような感じはしますけど、多分、大丈夫です』
「はぁ?…あのねぇ、君は行く気満々だろうけど僕は専ら反対な訳」
「嗚呼、目覚めたのかい?調子はどうだ?A」
体温計を脇に挟んだのと同時に与謝野女医が大きな伸びをして入って来た。
そうか。与謝野女医は途中で抜けたのか。
じゃあ乱歩さんはずっと隣に、?
『あ、えっと、まだちょっと変な感じはしますけど大丈夫です』
「ふぅん?さっきあれだけ熱出してたのによく云うよ」
『あ、ほら、37度2分…。うん。行けますよね?』
絶妙な数字に苦笑いしつつも2人の顔を見ると乱歩さんは相も変わらずであった。
「乱歩さんも付くんだろ?三十分以内で切り上げるんだったらって感じだねぇ。まぁまた上がりそうだし行かない方が懸命か」
『よ、与謝野女医ぇ…、御相手の方に一言言って終わらせるので…ね?』
「……、じゃあとっとと準備して。僕そういうスーツとか手元にないからね」
ぶっきらぼうに云い捨てて、帽子を机に置いた乱歩さん。隣に立つ与謝野女医は驚いたといわんばかりに目を見開いてからくすくす笑い始めた。
『乱歩さん、!全然大丈夫です!探偵服でも十分すぎますよ!!』
「煩い」
「、ふふっ、大分甘いんじゃァないのかい?」
「〜っ煩い!」
*
「カイロで暖めて」
『あ、私の使いますか?今丁度熱々ですよ』
「違う、君自身を暖めなくてどうするんだ。全く…首とか関節温めた方がいいって与謝野さんが云ってた」
そっぽ向きながら口を尖らせて話しているけど、何処か何時もと違う乱歩さんに違和感を感じる。
唯、私自身も何処か変である。
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時