黒服の秘密のお仕事

41 ページ41

さっきとは違う
優しくそっと
包むようなものじゃなくなっていて

掴む
が近いと思った

ぎゅぅぅっと込められた力が
現実だと知らせていて

背中に当たる熱も

巻きついた強い腕も

耳元に伝わる紫耀くんの呼吸も


優しさなんか無く
強制的に私の体温を上げていく




…ぅゎ…泣きそう…


さっきまでは
考え事されながらだったのを怒ってたのに

そんな出来事も
そんな権利も無い事も忘れて



どうしても
今、すぐに


「…私も…抱きしめたい…」





力が緩むと腰を引き寄せられて
身体が半回転する
思わず口紅がつかないように顔を横向ける

目の前に首筋が見えて
肩に頭をのせた




ぁぁ…首からフェロモンが出てるって本当だわきっと…色気もそうだけど

頭が働くことを拒否してるもん


心臓はバクバクして頭はトロけるって
ダメだ末期だ



「…ちょっとゆうさん…俺を抱きしめたいんじゃないの？」




紫耀くんの低い声が
頭に響いて


誤魔化すように背中にしっかりと手をまわす


「遅いよ…」

紫耀くんが呟いて
もう一度

力が込められた




なんか…これでいいとは言えないけど
嫌じゃないし
自分から離れることなんか出来ない

…私って流されるタイプだったのか
傍に居れるならもぅ何でもいいや…







何の予備動作もなく抱き上げられた
思わず背中から手を引いて固まる




「ちゃんと抱きついててよ」

そろっと肩に手をまわす




紫耀くんがサマになってて

ますます
恥ずかしい




同じようにソファまで運ばれ
危なげなく
紫耀くんの膝の上に
そのまま座る


さっきと同じなだけなのに…



顔の位置が近くなり手に汗が出てくる

何となく肩から手を浮かせてしまう



今は紫耀くんこっちを見てるし…

何考えてるかなんかはさっきと同じでわからないけど


落ち着かないのは 比じゃない



紫耀くんの…

ずっと見てたいキレイな瞳が
私だけを見ている







勘違いしそうになって
考えるのをやめた時










「俺はゆうさんだけだから……ごめんね、しばらくは……この言葉が精一杯かも」




ぁぁ…
何となくわかった


…うん
そうなのか…

もしそぅだったら



「はい…」



……嬉しい










「…口紅…落とすよ」





何も考えずに

背中からまわった腰を引き寄せる手と
うなじに込められた力に従って



瞳を閉じた

42 side紫耀→←40 side紫耀

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す