2話 恥辱 ページ3
柔らかい芝は燦々と、太陽の優しい光を浴びて、立派に輝く。箒で掃く前は黒ずんでいた芝も、今は元の輝きを取り戻し、生まれたての人のような、幼稚で、生命の始まりを感じさせる産声の様な輝きを、ただ放っていた。
だが今は、そういう綺麗事をつらつらと思っていても、ただうざったくなるだけの季節。
いちいちそんなこと考えていれば、脱水症、のような有名な病気で死ぬだろう。ここ、リザイアの夏は、それほどまでに暑く、むしむしした気候となるのだ。
だからこの国には、綺麗に肌をやいた【パララファーリイ】が多い。そんな茶色の肌はとても美しく、リザイアは、舞踊会で、よくこの世界で1番の踊り子、【ユリア】を輩出していたのだが。
今の【ユリア】は、色白で、手に取っただけで折れてしまいそうな体と、何とも珍しい髪と瞳の色を持っているらしい。その姿は、まるで、今なお語り継がれ、崇められる最初の【ユリア】の映し身と言われるほど。
それで、昨晩【ユリア】になりたい、といった義理の妹を思い出した。
彼女は、確かに美しい褐色の肌を持つ、格上の踊り子、という意味を持つ浜鳥という称号を持つ人気な踊り子だが、彼女が今の【ユリア】に勝てるわけがない。直に今の【ユリア】を見たことがあるわけではないが、そうなのだろうと思えるほど、彼女の人気は絶大なのである。
義理の妹とはいえ、一応身内。恥ずかしいこと、ため息をつくと、ちょうど道具の片付けから戻ってきたらしい橙の髪の男、大天遥斗が、何故か謝罪の言葉を口から出した。
「ごめん、突然手伝わせちまって。あんた、白石さん、名字から察するに白石家の人でしょ? 何でその名字を持ちながら従属の証の服を着ているかはわかんねーんだけど、よかったら、ここに住まない? 主もあんたを気にいちゃってさ。今から来るって言ってた」
一方的かつ乱暴的な口調に半ば目を覚まされた感覚で、思い出す。私が今着ているのは、従属の証の服と、魔法がかかった足輪だということに。
刹那、顔の体温が上がるのを感じて、咄嗟に顔を俯いた。
「あの、お分かりの通り、わた、私は、従属、者、ですので、い、家に帰ります・・・・」
そう言って彼に背中を向けて歩き出そうとするも、従属の証の服にあるチョーカーのようなものを掴まれ、引き戻される。
胃が、すうっと嫌な悪寒を全体に巡らせているような、圧倒的な恥辱。その場で走り出そうと身構えた時、彼の背中の後ろから、呆れるほど陽気な声がした。
3人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ましら(プロフ) - fruitさん» 返信遅れてごめんね!そう言ってくれて凄い嬉しい!読みにくいし作品はバンバン消すわの私の作品を追いかけてくれるなんて、凄い嬉しいよ。fruitちゃんの優しいところ凄い好き。コメントありがとう! (2017年9月16日 21時) (レス) id: 512c5a6245 (このIDを非表示/違反報告)
fruit(プロフ) - おおー!またもや面白そうな作品で・・・!この作品も追いかけさせていただきます(^。^)更新頑張ってね!! (2017年7月26日 21時) (レス) id: e09a409b3e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ましら | 作成日時:2017年1月30日 16時