ツンデレすぎる護衛人【灰谷竜胆】

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｢…ボス、ちょっといいすか。｣







＊





｢へぇ、襲われてたんだ、あの子。｣



なんとなく、報告しておこうと思った。
一応ボスの知り合いだし、女だし…なんて言い訳を沢山用意して。



そんな時だった。
ボスの携帯に一本の着信。
一礼して席を外そうとしたが、着信の相手をちらりと確認するとこのままいて、と言うので不思議に思いながらもその場に留まった。



ほんのニ，三分だったと思う。
電話を切り、振り返った顔は何かを企んでいるようだった。



｢うちに依頼だ。｣

｢…そうですか、どんな用件で？｣

｢Aの護衛。｣


タイムリーだよな、なんてこちらを見る目が
“どうする？”と言っているようでならない。









｢…………自分、やります。｣


結局、この人の前で嘘をつけるはずがない。
きっと、俺の胸中をわかっているのだろう。









A、お前は知らねぇだろうな。
一目惚れなんざしたの、お前が初めてだわ。








＊







｢…明日、素面の状態で聞くわ。｣


『好き、好きなんだもん…。』


酒に酔って、散々好き好き言っておいて寝やがった。
勘弁してくれ、こっちの気も知らねぇで…とため息をつく。



肩を叩いても揺さぶっても起きやしねぇ。
仕方なく姫抱きして部屋まで運んだが、女優ってこんな軽くて華奢なんだと驚いた。




｢ったく、振り回しやがって。｣


そうは言いつつもすやすやと眠るその姿に自分でも驚くほど、穏やかな顔で見ていることに気付いた。




｢これくらいいだろ。｣


額に一瞬のキス、そして軽く小突いた。








“起きたら連絡しろ。忘れたとは言わせねぇからな”



その辺にあった適当な紙とボールペンで殴り書き。
しっかり私用携帯の番号も添えて。





｢…俺らしくねぇな。｣

フッと笑い、その場を後にした。





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