ツンデレすぎる護衛人【灰谷竜胆】

12 side R ページ12

．


｢…この子、知り合いの所の子だ。｣



ボスが何気なく呟いたのでテレビに視線を移すと、
そこには今話題の女優であるAがいた。

CMやドラマによく出ている、顔立ちの整った女。
第一印象はそれくらい。



｢ボス、芸能関係にも知り合いいたんすね。｣

｢あぁ…まぁ昔な。｣



話はそこで途切れてしまったため、それ以上は聞かなかった。






＊





｢……ん？｣


任務の帰り、ふと視線を外にやると昼間ボスが言っていた例の女とすれ違ったような気がした。
それも、なにやら怯えたような表情で小走り。
少し離れた後ろには中年の男。






停めろ、そう言ったのは無意識だった。





｢家、通り過ぎてるよ？｣
｢早くしないと傷付けちゃうよ？｣

なるほど、そういうことか。
男に蹴りを入れて女に近付き振り向くなよ、なんて自分でも笑っちまうくらいかっこつけた気がする。




始末し終え、その場を去ろうとした俺の背中に
いつも画面越しで聞いている声で待って、と言葉が投げかけられた。


｢振り向くなって言っただろーが。｣

さも、自分はお前の事なんざ知らねぇという態度をしたが内心は少し動揺していた。



いざ顔を合わせると、その整いすぎた顔立ちに俺の瞳孔は開いたに違いない。



早く帰れよ、なんてぶっきらぼうな対応をして
そそくさと車に乗ったのをほんの少し、後悔した。





･

13 side R→←11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す