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そして当然、自己紹介という名の会話が終われば私たちは黙りこくる。『混ぜるな気まずい』。この言葉は本当に的を射ているらしい。
「……どうす、る?」
「どうする、と言われましても」
私をここへ連れてきたのは相川さんじゃないですか。
そう続けようとすると、遮られた。
「そ、そらるさん! そらるさん呼ぼう!」
「そらるさん? 誰です、それ」
「僕の相方」
動画の再生ボタンが押されたスマホを見せられる。
実写動画だろうか。片方には相川さん、そしてもう片方にはある男の人が写っていた。
女性のように白い肌に、青を連想させる、くせっ毛でふわふわの黒い髪。マスクはしているが、イケメンの部類に入るといって間違いないだろう。
「そらるさん、起きてるかな。ちょっと連絡してみる」
「迷惑ですね」
「この状態がイレギュラー過ぎるんだから、仕方がない」
相川さんはスマホを手に取り、画面をタップする。プルルル、と機械音が鳴ったかと思うと、その音はすぐに停止した。
「お、ワンコールで出た」
相川さんはスマホを耳元へ持って行く。なにやら話しているらしい。その相手が“そらるさん”だということは、容易に想像できた。
「あ、そらるさん。起きてます? ……はい。あの、ちょっといろいろあってですね。……言うなれば、僕のとこに女の子がいる、みたいな……? あ、危険人物じゃないですからね! 逆に僕の方からです! ……あー、もう直接説明した方が早いです。……はい、待ってます!」
相川さんはそう話したかと思うと、スマホ画面を再びタップして、通話を終了させた。……この電話の相手―――そらるさんはかなり混乱していると思うのは、私だけだろうか。
「……自分の家に女の子がいる……って、なんですか。説明下手ですか。誘拐でもしたんですか。混乱しか生みません」
「いや、それ以外に説明できることなくない!?」
「……」
「図星じゃん」
沈黙は無言の肯定。この言葉を考えた人は天才だと思う。
しかし、“危険人物じゃない”かぁ……。わざわざそんなことを言わなくてはならないなんて、なかなか東京は物騒らしい。いや、“東京だから”じゃなくて“歌い手だから”……?
考えれば考えるほど思考の深みに入っていく。
首を捻っていると、底抜けに明るいインターホンの音が聞こえてきた。
「……あ、たぶんそらるさん!」
え、早すぎません?
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時