【まふまふ】屋上から飛び降りようとしたら、下の人と目があった。

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まふまふ。その名前は、情報に疎い私でも聞いたことがあった。

なんだっけ。朝のニュースとかで紹介されていたんだっけ。そうだ。確か歌を歌っている人のはず。あれ、でも歌手じゃないんだっけ。

様々な情報が私の頭を侵食する。まとまらない考えを振り払うように、頭を振った。



「歌い手は、主にボカロ曲をカバーするネットアーティスト。オリジナル曲も出しているから、ネットで活動する歌手って考えた方が早いかな」



相川さんがそう説明してくれる。似たようなものでも、歌い手は歌手とは違うらしい。

けれど、それ以上にびっくりしたのはその前。

この数字の羅列が相川さんを応援している人？ 百万なんて優に超えている。有名人以外の何者でもないだろう。

そんなことを、スマホ画面を見ながら考える。……次元が違いすぎて、言葉を発することができない。



「だからまあ、僕が犯罪なんか起こしたら炎上しちゃうし……。君、警察行きたくないんでしょ。だから来て！」



少しずつ辺りの人通りが多くなってきた。

事情を全く知らない第三者に声をかけられるのは好ましくない。……といっても、それは相川さんもだが、事情を全く知らないわけでもないので、許容範囲内だ。

相川さんも辺りを気にし始めた。当然か。有名人だもん。

どの選択肢を選べば、私にとって一番良い結果になるのか。そんな仮定の話をシミュレーションしてみれば、答えは一つしかなかった。



「……とりあえず行くだけです。それだけです。いいですか？」

「もちろん！」



少しばかり自分が考えなしのような気もするが、私にはこれ以上の最善の結果が見つからない。

嬉々として道案内を始める相川さんに、重い足を引きずりながらついて行った。

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