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まふまふside
Aはきっと、思っているよりも過去に捕らわれているのだろう。
廃ビルの近くにある電信柱の陰に隠れていれば、話し声が聞こえてくる。のぞきこもうとすれば、表情だって見える。
Aの無感情な声色には、仮面のような酷薄な笑みの裏には怒りがたぎっていた。
「これ、って……」
Aと間宮さんには聞こえないように注意しつつ、声を漏らす。
Aは、自分が理不尽なことを言っているとわかっている。独りよがりの思いを他人に押しつけるという理不尽。だからこそ、怒りを押し殺しながらも爆発させているんだ。
……あまりにも、哀しいと思った。
その身に余る理不尽を受けながら、怒りを心の内でたぎらせ続ける。少しでも衝撃が加わったら、弾け飛んでしまいそうな想い。
それを甘んじて受け入れながらも、受け入れることが出来ない矛盾の行動。
どれもこれも、まだ中学生にしかなっていないAには身に余る。
……ああ、だから依存していたのか。この場所に。壊れてしまいそうな想いに蓋をして、理不尽の衝撃から身を守るために。
あまりにも不安定な心の納め方に、不安と同時に哀しさを持った。
「……すみません、取り乱しました」
取り繕ったような敬語を口にして、Aはぺこりと間宮さんに一礼をする。そのまま、家の方角に向かって駆けていった。
失念したような間宮さんをそっと確認すると、僕はAを追いかけて家に帰る。
___ねえ、A―――……“此処じゃなくて大丈夫なの?”
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時