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ガチャリと扉を開ける音がする。あ、この時間ならそろそろAが帰ってくるころかな、じゃあ今の音はAかな。
そんなことを考えているうちに、Aはリビングに入ってきた。
「今日は寄り道しなかったね、えらいえらい」
「ふざけないでください。普段、寄り道なんてあまりしてないじゃないですか」
「たまにするじゃん。ほら、廃ビルに」
「最近はしてませんよ」
Aが寄り道するのはだいたい廃ビル。ゆっくりしたいときに寄り道するらしいが、心臓が持たないので辞めてほしい、ほんとに。
ゆっくりしたいならば家で良いと思うが、それは嫌だと否定された。
未だにここは安心できる場所じゃないんだなー、と少し残念に思いながら、口を開くAを見た。
「……これ、見てください」
差し出されたのは、ファイルから取り出した一枚のプリント。
あ、プレゼントしたまふまふのクリアファイル使ってくれているんだな。なんて思いつつ、プリントに目を通した。
「授業参観……?」
プリントに書かれているのは“授業参観”という文字。
保護者の方へ、と書かれたプリントには概要がまとめてある。といっても、是非授業を見に来てくださいみたいなものだが。
「……え、行きたい! 僕立場上保護者だよね!? 行きたい! 見たい!」
願望のままに発言すると、Aは疲れたような顔でため息を吐いた。あれ、なにか気鬱になることでもあったっけ。
「……あなた有名人ですよね?」
「……う、そりゃあ……そうだけど……」
痛いところを突かれて口ごもる。
仕方ないじゃん、行きたいんだもん。……Aのクラスにリスナーさんが居ることは知ってるけどね!?
「変装するとかしてさぁ……」
「高身長イケメンなのに変装ですか、どう考えてもバレますね。あなた自分が目立つのわかってます? 高身長イケメンですし、それを差し引いても若すぎるんですよ」
「……あれ、今褒められた?」
「褒めてません」
Aのマシンガントークに対して褒められたと錯覚してしまうが、違うらしい。……あれ、でもどう考えても褒め言葉だよね?
「えー、ちらっと見るくらいならいけるんじゃない?」
「まふさんの場合、ちらっとで済まないでしょう」
図星である。
目をそらして沈黙していると、Aの「まふさんが行くことは断じて許容できません」という声が聞こえた。酷い。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時