20 ページ20
まふまふside
寝起きのため欠伸をしながらリビングに向かう。
Aちゃんは、未だに敬語や呼び方は変わらない。けれど、少しは打ち解けてくれたのかな。なんて思う。
そらるさんもよく様子を見に来てくれるし、基本的にAちゃんはリラックスしている。不安要素は特にないはずだ。
「……でも、あと少しで学校かぁ……」
僕の家がある場所に一番近い中学校。
今は春休み中だが、既に学校への入学手続きは済んでいる。Aちゃんは学校で上手くやっていけるかなぁ、なんて考えた。
Aちゃんは昨日、ゲーム実況をしていたから、少し疲れてしまったらしい。
現在八時。生活リズムが整っているAちゃんならとっくに起きているはずの時間だが、まだ部屋から出てきていない。
今日は僕がごはんを作ろうかな。そんなことを思いながらテレビの電源を入れた。
≪朝のニュースです。昨日二十二時、千葉県内で殺人事件が発生しました≫
朝から殺人事件のニュースかぁ、物騒だなぁ。
ちょうど流れてきたニュースを目に、呑気に考える。県外なんだから関係ないだろう、と。
≪被害者は、行方不明だった緒方修司さんと緒方由里さんとのことです。闇金融との抗争が原因かと考えて、警察は捜査を進めています―――……≫
「……え?」
思わず間の抜けた声を出してしまう。Aちゃんの名字は“緒方”だったはずだ。そして、両親がヤミ金融に手を出してしまったとも言っていて―――……。
「……っ」
ガラリ、とドアが開く音がする。
―――そこにいたのはAちゃん。青ざめてテレビ画面を見ているAちゃんは、被害者が両親だと認めているも同然だった。
「……すみま、せん。……ちょっと、出かけます」
「え……っ」
震えながらAちゃんは出て行く。
Aちゃんが向かった場所は、見覚えがあった。―――廃ビル、僕とAちゃんが出会った場所。
廃ビルの中にAちゃんは駆け込むと、崩れ落ちるように座り込む。
「……おとう、さ……っ。おかあさん……っ。やだ、やだよぉ……っ」
しゃくりあげながら嗚咽をあげる。
……Aちゃんが過去語りをしたとき。両親について、なんでもないことのように振る舞っていた。でもAちゃんにとっては、大切な、大切な家族なんだ。
こんな状態で、声をかけることなんて出来ない。足音をたてないようにそっと下がり、僕は一人で家に帰った。
581人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時