【まふまふ】屋上から飛び降りようとしたら、下の人と目があった。

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Aside



かなりトントン拍子に話が進み、ただいまタクシーの中。

警察署に行く、と相川さんが運転手さんに言ったとき、タクシーの運転手さんが少し引き気味になったのは仕方がないことだと思う。


しかし、まさか私の名字に出身地までバレるとは思わなかった。ネットって凄いなー、と、本日何度目かわからない呟きを漏らす。

ネットを使いこなしているのは、ネット上で主に活動している歌い手という職業だからだろうか。両脇にいる、相川さんとそらるさんを見て考える。

少し窮屈な車の中で彼らを見上げれば、微笑まれた。……むず痒いと思ってしまうのは、ただ単に慣れていないだけだ。……そうに、違いない。



＊



「……えーっと、私たちは警察署に行ってきたはずですよね？」

「大丈夫、場所は同じでも元の木阿弥じゃないから」



欠伸をしながら答えるそらるさんに目を向ける。いや、この状況になった原因はそらるさんではない。……相川さんだ。



「大丈夫だって！ ちゃんと了解貰えたじゃん！」

「確かに貰えましたけど……」



時を遡ること数時間前。

私たちは警察署に来て、強面というのが正しいであろう警察官と対面していた。

まず私が、ニュースになっている行方不明者であることを告げる。警察官は仕事が減った、と少し嬉しそうな顔をしていたが、注目すべきはそこではない。


私はただいま行くべき場所がない。両親が行方不明のうえ、自分ではなにも出来ない年齢だ。そこで解決案として、親が見つかるまで警察の方で引き取る―――と出たが。



・



『僕が、僕がAちゃんを引き取ります！』



・



相川さんが発したその言葉。完全に考えなしとしか思えないが、一応本気だったらしい。自分の身元が安全確実であることを証明し、職業柄、生活にも心配がないと力説された。

警察官は、私の了解を得るかのようにこちらを見たが「Aちゃんもそれで大丈夫だよねっ？」なんて勢いよく訊かれ、思わず大きく頷いてしまっことについて、私に非はないはずだ。


そして、現在相川さん宅。

にこにこ顔で猫ちゃんに餌をあげている相川さんに、ソファーで寛いでいるそらるさん、そして玄関前で困惑している私という、奇妙な絵面が出来上がった。

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