【まふまふ】屋上から飛び降りようとしたら、下の人と目があった。

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「……えーっと、だいたい把握は出来た」



全ての話を終えた頃、ちょうど僕らのカップヌードルは空になる。空き箱をゴミ箱に捨ててから、もう一度席に座り直した。

そらるさんは一応把握できたらしい。といっても、僕でさえわからないことが多いんだから、全てを理解するだなんて不可能に近いのだが。



「とりあえず、今Aが置かれている状況は……親が行方不明、行く場所なしの、警察には行きたくない―――で合ってる？」

「はい、間違ってはいません」



Aちゃんが頷く。

そらるさんの状況理解力には正直舌を巻いてしまうが、今の先決は別のことだ。



「あと、身元完全不明だよね？ 名字わかんないし、教えてくれないし。わかってることと言えば、下の名前に年齢くらい？」



頑なに名字を教えてくれなかったAちゃんを思い出して、頬を膨らませる。

別に個人情報晒そうってわけでもないし、単純に知りたいだけなのに、教えてくれないのはなんでだろう。

いじけていると、そらるさんが当然のように口にした。



「え？ 名字って“緒方(おがた)”でしょ？」

「……え？」

「……なんで知っているんです？」



そらるさんが発した言葉はどうやら正解だったようで。Aちゃんの肯定の返事とともに、そらるさんに僕ら二人の疑惑の目が降り注ぐ。

え、知り合いだったとかじゃないよね？



「緒方A。十二歳。千葉県在住。ただいま行方不明」



個人情報大盛りのそらるさんの言葉。それと一緒に、そらるさんがさっきから熱心に弄っていたスマホ画面が向けられる。



「ネットニュースに載ってたよ、行方不明の記事と一緒に。一応県外も検索してみて良かったよ。千葉県在住らしいもん」



ネットニュースかぁ、さすがにそこまで気が回らなかったなぁ、なんて思いつつも、そらるさんの判断能力に感嘆する。適応能力も高すぎると思うのは僕だけだろうか。

悶々と一人でそらるさんの凄さに唸っていると、Aちゃんの「ネットって凄いんですね……」なんて言葉がため息とともに耳に入ってきた。

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