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コツン。そんな音を立てた私の足下は不安定。
ひび割れた壁に、透ける天井。日本の首都東京にあるビルなのに、ここは廃れている。
何年前からだろうか。誰も寄りつかないこの廃ビルは、私の休息の場所になっていた。
「……なら、今度は永遠の休息をちょうだい」
今にも崩れ落ちそうな階段を上り、透けた天井の上にでる。
ビルに備えつけられた屋上は、どこまでも静かで、私を安心させてくれた。
風が頬を撫でる。もうすぐ春になるが、まだ少しばかり冷たい風は、心地よかった。
もう既に何回も登ったはずのこの場所に少々感傷を覚えながらも、屋上の端―――まだ、柵が残っているが、私の体型ならば充分通れる場所に行く。
もう、ここに来ることはないだろう。ここどころか、この世界にも。
この世界への別れの一歩を私は踏み出した。いや、踏み出そうとした。そこには全く想定していなかった事実。
「は…………?」
喉の奥から、かすれている、妙に力の入らない声を出す。
下……下といっても、何メートルも下と、お互いの視線が交差する。
「……え? っえぇ!? ちょ、え、なんで……」
想定、していなかった。
こんなところに、こんな夜中に、人が通りかかるなんて。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時