魔王ってこんなに優しかったかな ページ1
「ディートリヒ・べリク」
彼は、一番信頼している精霊の名を呟いた。
「何だ」
「言ってみただけ」
「そうか」
『言ってみただけ』と咄嗟に嘘をついた。そして、会話を続けようとしてこう言った。
「いい名前だね」
「褒めても何も出ないぞ」
しかし満足そうだ。
「知ってる」
「全く…」
「………」
言いたい、あの感情を、ぶつけたい。
「……貴君は、どうしてかは知らんが私を好いているな」
「………え゛」
何故、どうして、ずっと一緒にいるとはいえ、この気持ちだけは知られていない筈だった。
「ど、どうして」
「聞こえたからな」
「…きこえたって…」
「アルに言っていただろう」
「…」
そう、この気持ちは伝わらないだろうと勝手に悟り、滅多に飲まない酒をがぶ飲みしている時、偶然通りかかったお人好しの魔王、アルドベリク・ゴドーを捕まえ愚痴をこぼした。
「アルさーん……たすけてぇ…」
「…何だ、酒に酔っているのか」
「…ヤケ酒ですけど」
その一言で何かを察したアルドベリク・ゴドー(以下魔王)は隣に座った。
「…仕方ないから話を聞いてやる」
「ありがとうございます魔王様」
「簡潔に話せ」
「元帥が好き」
ものの一秒で返ってきた。
「…は?」
「んだから、元帥が好きなんです」
酔っているのだろう、舌足らずで目力を強くしてこちらを見る。
「…それがどうしてヤケ酒に繋がるのか俺には分からない」
「んーー、元帥は、…出会ってからずっとカッコよくて、弱さを見せなくて、なんかもう、カッコよくて」
「惚気か、惚気なのかそれは」
あの魔王が突っ込みを入れた。
「ノロケならこんな飲まないです…」
「…で?」
「……元帥が、俺を見てくれない」
「…」
魔法使いはしょんぼりとし、うつ伏せになってしまった。
「……俺が見すぎなのかなぁ…」
「ふむ、『恋愛として』見てくれない、という事か」
「物分かり良すぎません?」
「俺とてこんな事考えるとは思っていなかったがな」
「はぁぁ〜〜〜〜…」
幸せが大分逃げただろう大きな溜息を吐いた。
「俺と出会う前からずっと一緒だったのだろう?」
「んまぁ、そうです」
そう、魔法使いとディートリヒの関係は軽いものでは無い。
まだ魔法使いと呼ばれるには未熟だった頃からの付き合いであり、嬉しい時、悲しい時、辛い時、どんな時でもずっと一緒なのだ。
「ならもう告白でも何でもすれば良いじゃないか」
「…、」
文字制限…
見てくれる人が少しでもいるなら続けたい。
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作者名:転茶 | 作成日時:2018年9月11日 23時