検索窓
今日:63 hit、昨日:4 hit、合計:93,491 hit

ページ9






「はい、もうだいじょうぶかな?」



 できるだけ雨をふき取った私は、ハンカチをポケットにしまった。


 黒木君が、申し訳なさそうに目を伏せる。




「ごめんねアーヤ。


 ああ、そのハンカチも、俺が洗濯しておくよ」




「え?あ、ううん。別にいいよ」



「いや、それは申し訳ないからさ」





 首を縦に振るまで一歩も引かなそうな気配に、思わず頷いた。


 黒木君が洗濯する姿なんて……想像できないけれど。









「黒木君、あんなところで何していたの?」








 気になっていたことを聞いてみる。



 黒木君は、僅かに息を呑んで、その後、ゆっくりと吐いた。




「まあ……ちょっと、ね」







 その声が、僅かに疲れの色を帯びる。



 同時に、立ち入ってはいけない様な


 ……拒絶の空気を感じて、私は言葉を飲み込んだ。









 黒木君は、時々こういう雰囲気を醸し出す。


 踏み込んではいけない。
 ある一線を越えたら、私達は『仲間』からただの『知人』になる。



 そんな……不思議で、危険な雰囲気を。





 私は、彼を失うのが怖くて



 いつも、そこで口をつぐんでしまうんだ。





 そう、今も。
















 しとしと、


 静寂を遮る、静かな雨音。




 私たちは、いつもはあり得ない、若干気まずい空気を感じながら、




 視線のやり場に困って、ただただ目の前で振り続ける雨を見つめていたんだ。



*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (129 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
72人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月21日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。