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「はい、もうだいじょうぶかな?」
できるだけ雨をふき取った私は、ハンカチをポケットにしまった。
黒木君が、申し訳なさそうに目を伏せる。
「ごめんねアーヤ。
ああ、そのハンカチも、俺が洗濯しておくよ」
「え?あ、ううん。別にいいよ」
「いや、それは申し訳ないからさ」
首を縦に振るまで一歩も引かなそうな気配に、思わず頷いた。
黒木君が洗濯する姿なんて……想像できないけれど。
「黒木君、あんなところで何していたの?」
気になっていたことを聞いてみる。
黒木君は、僅かに息を呑んで、その後、ゆっくりと吐いた。
「まあ……ちょっと、ね」
その声が、僅かに疲れの色を帯びる。
同時に、立ち入ってはいけない様な
……拒絶の空気を感じて、私は言葉を飲み込んだ。
黒木君は、時々こういう雰囲気を醸し出す。
踏み込んではいけない。
ある一線を越えたら、私達は『仲間』からただの『知人』になる。
そんな……不思議で、危険な雰囲気を。
私は、彼を失うのが怖くて
いつも、そこで口をつぐんでしまうんだ。
そう、今も。
・
しとしと、
静寂を遮る、静かな雨音。
私たちは、いつもはあり得ない、若干気まずい空気を感じながら、
視線のやり場に困って、ただただ目の前で振り続ける雨を見つめていたんだ。
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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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