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 スタート、の言葉と同時に、その肩を両手で掴んで引き寄せた。





「全部」



 えっ?と固まったその体をやや乱暴に抱きしめ、耳元で呟く。




「優しく抱きしめたら素直に体を預けてくるくせに、
ちょっと強く抱きしめただけで固まって動けなくなっちゃうところとか、」

 少しだけ体を離し、その顔を近距離で見つめる。


「刺激に慣れたとか言ってる割に、こういう不意打ちに弱いところとか」


 そう言いながらその額にキスをした。

 続いて目元、頬へと唇を落とす。


「ちょっ、黒木く」
「未だにカップル気分で上の名前で呼んじゃうところとか」


 クスッと笑うと、その抱きしめた肩が震える。


「あんまり乱暴に抱きしめたら折れちゃいそうな華奢な体とか、可愛い顔立ちとか」


 ふと目を戻すと、潤んだ瞳と視線が絡んだ。

 無意識に笑みを浮かべ、



「キスをする時、ギュッと瞑る目とかね」



 そう言ってその唇に触れる。


 驚いたように目を見開いた彩は、おそるおそる目を閉じた。

 力を入れないように入れないようにとして逆に力が入っているその姿を可愛く思いながら、自分も目を閉じる。


 何度それを重ねても飽きることのない、フワフワした感覚に包まれながら、幸福感に満たされる。

 マンネリなんてとんでもない。

 自分はきっと、一生彼女の虜なんだから。










 ピーッピーッと何かがうるさい。なんだと思ったら、タイマーのアラームだった。


「んーーーーー!!んぅーーーーー!!」



 言葉にならない声で訴えてくる彩。名残惜しく思いながらも唇を離した。



「きっ、キスは反則でしょっ?!」



 即抗議の声がとんできたが、赤い瞳で言われても怖くない。


「そんなこと言われてないよ」


 自分でも意地悪いなと思う笑顔でそう言うと、彩は言葉に詰まった様子で黙った。代わりにプクッと頬を膨らます。

 愛おしい。

 狂おしいぐらいの感情がせり上がってきて、もう一度その膨らんだ頬にキスをした。




「全部、愛してる」



 そう囁くと、耳まで赤くなる。本当になんだこの可愛い生き物は。




「でも、勝負は私の勝ちだからねっ」




 ああ、そんなのがあったっけ。



「いいよ、なんでも言ってごらん」



 そう言うと向日葵のような笑顔が咲いた。




「明日休みでしょう?いっしょにデートしよう。見たい映画があるの」




*→←*



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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月21日 15時

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