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* 「雨」 ページ35





ほんのり雨の香りがした。
空を仰ぐと、今にも泣きだしそうな雲泥が立ち込めている。

これは、一雨くるだろうか。



足を早めたと同時に、ポツリ、と肩に軽い音がした。

ポツポツと次第に音は増えていく。だが大した量ではない。粒は小さく、まばらだ。この様子だとすぐに止むだろう。


ほっと足を緩めると、桜色のワンピースが視界に映った。





「………アーヤ?」




服飾店の軒下で困った表情で立ち尽くしているのは、立花彩だった。こちらには気づかず、空模様を気にしている。

これぐらいの雨で、なんで。そこまで彼女は神経質だったろうか。不思議に思うと同時に、気づいた。


あんなワンピース、彼女は持っていただろうか。けして派手ではなく、大人しやかだが凝ったデザイン。
華奢な体にピッタリあっている。膨らんだスカートは、この距離からでもシワひとつ見えないほどさっぱりしていた。


「おろしたて……ってとこかな」



お気に入りの服を気にして、僅かな雨も避けるというのはなんとも彼女らしい。

困った顔も途方に暮れた雰囲気もなにもかも愛おしく思えて、笑みが零れた。


(アーヤは雨を恨めしく思っているんだろうけど……)

自分はこの雨に感謝しよう。




「アーヤ」


振り向く湿った表情に、一瞬のうちに太陽が覗いた。


「アーヤも雨宿り?」



*「観覧車」→←8、黒彩まとめ「呪詛」



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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月21日 15時

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