5、灰色と青 ページ22
『ちょっと散歩してくるね』
メールでお母さんの携帯にそう送って、家を出る。
ドアを開けて開けた景色が、変わらずあの頃のままで、鼻の奥が少しツンとした。
・
お盆だからと、久しぶりに実家に帰省した私。
電車に揺られてくる道が、あまりに変わらなくてビックリした。
その夜は、何故か寝付けなくて。
気づいたらもう夜明けの時刻。
このままベットでだらだらしているぐらいならと、軽い服装に着替えて、家を出た。
まだまだこの時間帯でも湿気の多い時期。それでも日中に比べるとはるかに涼しく、吸い込む空気が軽やかなの。
薄暗く静まり返った街並みを、ゆったりと歩く。
・
身長も伸びて、もう見える風景は変わったはずなのに。
ここにいると、まるであの頃に戻ったような気分になるんだ。
「何があろうときっと僕らは上手くいく」
そう無邪気に笑えた日々を憶えている。
真夏の太陽の下を走り回って
真冬の雪の降る中を温め合って
握りしめた手は暖かくて、
「冷たいよ」
そう笑う君の笑顔も。
桜を一緒に見に行った。
綺麗だね、と軽く笑い合えた。
儚く散りゆく姿には目もくれずに
ただ美しい姿だけを記憶にとどめて。
君も同じだったでしょう?
バカでまっすぐで、眩しいぐらい無邪気な子供だったでしょう。
・
あの頃の、青かった自分がいるようで、目を瞑りたくなる。
君と重なった笑い声が聞こえてきそうで、耳に手を当てた。
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イズミ - 黒木君が泣くという発想がわたしにはおもいうかばなっかたので、すごいとおもいます。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page12 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - アーヤが7人で見たらぎゅうぎゅうだよ。って言った後、「アーヤ最強。」と言われているのも面白かったけど、どいう意味かアーヤが分かっていないのが面白かったです。 (2023年3月13日 18時) (レス) @page6 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - わ、待ってます! (2019年1月6日 0時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
花畑(プロフ) - ずずさん» 了解です(笑)次の「誰も知らない物語3」で書かせていただきますね!いつになるかは分からないですが…その時はよろしくお願いします。 (2019年1月5日 21時) (レス) id: e150cc9add (このIDを非表示/違反報告)
ずず(プロフ) - 大丈夫です、嬉しいです!あ、いや、受け取らなくてもいいですよ…? (2019年1月5日 20時) (レス) id: 054a7adbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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