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32.混沌とした心 ページ32

私のことを知りたい…?



 それはどういう意味…?




「杏寿郎、それって…」



 私が言葉を紡ぐより先に


 杏寿郎は身体を起こして背を向けた。



「すまない…!今のは忘れてくれ…」



 風で揺れる髪の間から少し見える彼の耳は



 熟れた林檎のように真っ赤で、



 

 込み上げてくる不思議な感情と



 泣きたくなるような感情の間で



 私の心は何色も混ぜたように入り乱れる。





「…さて、そろそろ稽古を再開しようか。


 まずはAに肆ノ型を教えよう!」


 

 そう言ってこちらを向いた杏寿郎は


 いつも通りの笑顔だった。
 





 集中しなければ…




 私は混沌とした心を晴らすように



 目を閉じて深く呼吸する。






 瞼の裏に映るのは…













 私は目を開けると杏寿郎に一礼した。




「…よろしくお願いします!」






「うむ!では、まずはどのような技なのかを説明する!

 肆ノ型 盛炎のうねりは、

 前方広範囲を勢いよく渦巻く炎で薙ぎ払う技だ!」





 杏寿郎はそう言うと実際に手本を見せてくれた。




 なるほど…



 見事な剣裁きに圧倒される。




「すごい…!」




「この技は攻撃だけでなく、防御にも使える!


 会得できれば君の剣技の幅も広がるだろう!」





 それからどれくらい時間が経ったか分からないほど


 稽古は続き、気がつけば日は西に傾いて、


 空は綺麗な橙色になっていた。

 






「今日はここまで!」



「ありがとうございました…!」



「うむ!Aは飲み込みが早いな!


 もう少しで肆ノ型を会得できそうだ!」




「杏寿郎の教えが分かりやすいからだよ。


 でも、まだまだ…」





 それにやはり分かってはいたことだけど、


 身体が悲鳴を上げているのを感じる。


 手足が震え、脈拍も速くなっている。




 私は手の震えを隠すように


 顔の前で擦り合わせてみる。




「…だいぶ冷え込むようになってきたね。」





 すると、不意に私の手を杏寿郎が自身の手で包んだ。




「A、隠すな。」




「あ…」




「約束しただろう?」



 

「ごめんなさい…」





「うむ。

 俺も稽古に夢中なり、気づかなくて申し訳なかったな。」





 杏寿郎は何も悪くない。



 貧弱な自分が憎い…








 先程までの手の震えは



 彼の優しさに包まれて



 安心したように次第に止まっていった。

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - ハウンさん» ハウンさん、こちらこそお読みいただきありがとうございます!引き込まれると言ってくださり大変光栄です!続編も更新しましたので、引き継ぎお楽しみいただけるよう頑張りますね! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、ありがとうございます!まっすぐな煉獄さんの深い愛情が表現できていれば…と思います。これからもそんな彼を言葉だけではなく、仕草や態度での表現ができるように努めたいところです! (2022年3月1日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
ハウン(プロフ) - 素敵な作品を作っていただきありがとうございます!ものすごく感情移入してしまって胸が締め付けられるくらい引き込まれました!続編楽しみにしてます! (2022年2月28日 23時) (レス) id: 065a2165a6 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 今日も煉獄さんが素敵だ。押し付けがましいところは一切なく、ただただ彼女の幸せを願い笑顔を作れる彼は本当に素敵。 (2022年2月28日 21時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 彼はあまり内緒話など出来なさそうですよね(笑) 巧いだなんて言っていただけて…嬉しすぎて今夜は幸せな気持ちで眠れそうです〜!いつもありがとうございます。 (2022年2月26日 21時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年2月5日 21時

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