帰る場所護る場所 (ページ10)

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ヤクソク×ノ×ジカンページ10

夜が深け花街ヨシワラが賑わう頃。

Aは男たちに囲まれ部屋にいた。

客を取ることも許されず、足抜けをしないように見張りをつけられていた。

『足抜けなんぞ到しんせんよ。どうぞ仕事に戻っておくんなまし。』

｢今日はこれが仕事ですので。｣

『そうでありんすか。』

もう少しすれば彼らとの約束の時間になる。

客を取れないのではもう誤魔化しようがない。

Aは焦っていた。

『誰か熱燗を持ってきてくんなまし。茶を挽くことも出来ないんじゃあ仕方ありんせん。暇を潰せるものを持ってきてくんなまし。』

｢かしこまりました。｣

これで減ったとしても1人。

一体何人いるのか、動くことの出来ないAには把握出来なかった。

Aはとにかくオーラを貯めようと、心を落ち着かせた。

島のルールに触らないギリギリの量のオーラを貯め、攻撃の隙を探す。

それが出来なくとも、あの技さえ使うことが出来れば。

そんな考えを巡らせているうちにAの部屋の周りに気配が増えた。

屋根裏に2人、外に2人。

ああ、時間が来てしまった。

これを許したのはA自身。

バレてしまったら死ぬのが今日になるのだろうか。

身請けそのものが無くなるのだろうか。

どちらにしても島から出られないのは変わらない。

それなら彼らを無傷で帰らせるくらいの反抗は構わないだろう。

『そろそろでありんすね。』

｢何か？｣

『いえ、こちらのことでありん』

｢うわぁぁ｣
｢誰だ止めろ！｣
｢部屋へ近づけるな｣

廊下から怒鳴り声と断末魔が聞こえた。

『ああ、始まってしまいんしたか。』

時計は約束の時間ちょうどを指していた。