ユメ×ト×ユメ ページ9
1人になった部屋でAは唇をきつく噛み締めた。
震える体を、同じように震える腕で抱きしめる。
押し殺していた気持ちが出てきそうで怖い。
今、この気持ちが出てきたらもう戻れない。
きっと酷く取り乱してしまう。
姐さんたちは最後まで気高く美しかった。
その姿を見習わなくてはいけない。
次の代へ伝えなくてはいけない。
なのにどうして。
『夢を見てはいけない。希望を抱いてはいけない。光を求めてはいけない。分かってる、自分が一番。私は救われない。ずっとずっと暗いところにいることしか出来ない。救われることは無い。助けは来ない。夢は叶わない。決して。望みは報われない。』
自分を抱きしめる腕に力が入る。
爪が腕にくい込んで血が滲む。
パ「ダメよ、痕が残るでしょう。」
『昨日の……』
パ「ほら、腕を解いて。」
どこから入り込んだのか、パクノダがAの指を解いた。
パクノダは昨夜とは違い、シンプルなデザインの着物を身にまとっていた。
パ「これ、団長からのメッセージよ。」
パクノダが懐から出して見せたのは、真っ白い紙。
Aは少ないオーラで凝を行った。
パ「読めるかしら?」
『ええ、薄らとなら読めていんす。』
パ「なら良かったは、私たちはこの通りに動くは。準備しておいてくれる。」
『あい。』
パクノダは紙の上に小さな花をモチーフにした菓子を置いた。
パ「さっきお店で見て買ったの。甘いものは心を落ち着けるわ。」
『お恥ずかしい。みっともない姿をお見せしてしまいんした。』
パ「みっともないだなんて、素敵よ。ずっとそうして生きてきたんでしょう。私たちと似ているわ。」
『似ているとは?』
パ「生きるために殺して奪う。ずっとそうしてきたの。その為には血も涙も要らなかった。」
Aは言葉を返すことが出来なかった。
目の前のパクノダの表情からはそんな過去は見られなかったから。
パ「もし迷っているなら私の為と思ってちょうだい。私はあなたに死んで欲しくないわ。だから、ね。」
パクノダはそう言って出ていこうとしたが、足を止めてふりかえった。
パ「このこと、団長には内緒にしてちょうだい。強制しないようにって言われてるの。」
『あい。わかりんした。』
Aはパクノダの置いていった菓子を口に運んで、少しだけ表情を和らげた。
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カナ(プロフ) - ほんとにこの作品大好きです何度も読み返してます。また更新されるのをずっと待ってます! (2020年8月28日 12時) (レス) id: 653b7cacce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうたそ | 作成日時:2019年11月25日 20時