#大丈夫じゃない ページ7
もしかして。
彼女と何かあったのかな。
そう思ってても。
どうしてか聞けなくて。
どうしてか聞きたくなくて。
大学の授業の話とか、最近ハマってる音楽とか、攻略難しかったゲームの話とか、最近人気な映画の話なんかばかりをして。
それでもさかたんが楽しそうにしてるから大丈夫かな?なんて思ってた。
でも、違ってた。
それが分かったのは、ちょっとした騒ぎになってからの事だった。
お店が閉まる時間が近づいた頃、週末を前にして私達が飲みに行く相談なんかをしていたら。
駅から直結した入口のある2Fから、私の働いている3Fに内線が掛かってきた。
売場にいた私がカウンターを振り返れば、内線で話していた子が、慌てたように私に向かって手招きした。
何事かと思って急いでカウンターに戻って内線を代われば、受話器の向こう側から焦ってる「とにかく逃げて」っていう声が聞こえてきて。
「Aさん、お久しぶり!」
背後から掛けられた声に振り向きながら、受話器からは「間に合わなかったか…」って呟きが聞こえて。
振り返った私の目の前に立ってたのは、お店のオープニングで他店から応援に来ていた社員さんだった。
「……こんばんは」
「ごめんね、ちょっといいかな?」
ぺこっとお辞儀する私に、ずっとニコニコしている彼女が、どこか怖く感じて。
そんなに仲良く話した事も無かったのに、私に何の用事があるんだろう……っていう気持ち。
ニコニコしている彼女の後ろ……奥の方にあるバックヤードへの扉が開いて。
そこから顔を覗かせたのは、仲良し8人組のうちのひとり・センラさんと、私達と仲良くしてくれているこの店の社員・そらるさんだった。
「仕事終わった後、予定あるかな?」
「……え?」
「ちょっと話したい事……というか、聞きたい事があるのよ」
尚もニコニコしている彼女の向こう。
顔を覗かせていた2人は、両腕を使って大きく「×」を作っていて。
内線が繋がったままになっていたからか、受話器の向こうからは「A、ダメ!」って声が聞こえてくる。
「……え、っと」
「これ、私の番号だから、仕事が終わったら連絡ちょうだい」
有無を言わさずメモを握らされて、そのまま彼女はフロアからいなくなってしまって。
意味が分からない私は、彼女の背中を眺めていた。
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