#キライ ページ22
さかたんは、本当に消えた。
どうして私とあんな事をしたのか、聞くに聞けなくて電話もメールも出来なくて。
聞きたいけど聞けない。
聞けないけど聞きたい。
そんな状態のままバイト先に出勤したら、シフト表のさかたんの欄が無くなっていた。
自分のフロア以外のシフト表なんて見るクセが無かったから、その時に初めて気が付いて。
壁に貼られたシフト表から視線を外せなくなった私に、同じバイトのみんなや社員さんまでも謝ってきて。
どうやら退職する事を秘密にされていたのは、自分だけだったんだと、その時に初めて気が付いて。
訳も分からないままその日の仕事を終えた私を待っていたのは、センラさんだった。
仕事終わり、そのまま連れてこられた居酒屋で、私がセンラさんから聞かされたのは……さかたんはもう、日本にすらいないって事だった。
セ「坂田に止められてたんだよ……Aにだけは言うなって……ごめんな」
「……なんで?」
センラさんと高校の同級生だというから、ご両親も勿論日本にいるものだとばかり思っていたのは、私の思い込みで。
さかたんのお父さんは大企業の重役で、拠点はアメリカ、海外を飛び回るエリート中のエリートだった。
さかたんの家族はみんなアメリカにいて、日本で学びたいと思っていたさかたんは高校生から一人暮らしをしていたんだと、教えられた。
そして、さかたんは家族からとても可愛がられていて、何度も何度もアメリカに来るように打診されていたのを断っていたのに……今回の騒動が起こってしまって。
「もう一人暮らしはさせられない」そう決めたお父さんが直々に迎えに来て、半ば強引にアメリカに連れて行ってしまったんだそうだ。
お父さんの仕事の都合と、大学への手続き、バイト先との折り合いなんかをつけるのに1ヶ月は日本に居させてくれと、さかたんが頼んで。
渋々お父さんは頷いてくれたらしいのだけど、そんな事情を翔君は聞かされていたんだと、俯いた。
セ「戻って来るかも分かんないみたいで」
「…………」
セ「坂田がアメリカ行ったのは7日……それがタイムリミットやったんよ」
それは。
さかたんが私の部屋から消えてた日。
「…………うぅ〜〜〜」
セ「泣くなよ……」
それからは。
私は七夕がキライだ。
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