#お酒だって ページ20
『へぇ……意外と綺麗にしてるんやな』
「意外と、って……」
『ウソウソ、冗談やって』
「好きなトコ、座って？」
『はぁい』
キッチンからグラスを２つ持って戻れば、さかたんは床に座って部屋をキョロキョロ見回していて。
本棚に暫く目を止めると、くるりと私の方に顔を向けて、むぅ……と唇を尖らせた。
テーブルを間に向かい合わせ。
ニノちゃんとの距離感が近いっていうのは、いつもの事なハズなのに……好きだって気持ちが先行して、どうしてかモジモジしてしまう。
『お前んち、ホントにゲーム無いんやなぁ……やってみればハマると思うのに』
「本体高いんだもん」
『先輩んちにあるヤツ、かっぱらってくればいいじゃん……あの人、どうせやらなくなるし』
「たしかに」
さかたんが買ってくれたビールをグラスに注ぎながら、当たり障りのない話ばかりして。
彼が私の部屋に来た意味がどうしても分からなくて、彼の会話に合わせるしかなくて。
大学の講義はこんなんだ……とか、最近入荷した新作がどうだ……とか、そんな話ばかり。
缶の中身も１本……また１本……って減っていって、結局さかたんが買ってきてくれたビールは全部カラになっちゃって。
ウチにあったおつまみも、何袋かカラになってて、残りは開けたピーナッツが少しだけ。
両手を後ろについて、その手に自分の体重を掛けてるさかたんは。
頬がピンクになってて、ふわふわと頭を揺らしてるから、ほろ酔ってるんだろうな……って感じで。
時計が差すのは、なかなか深い時間。
呑む相手が欲しかったのかな？
でももう全部呑んじゃったし……。
腰を上げれば、どうしたの？って顔したさかたんが私を見上げていて。
キラキラした潤赤色の綺麗な瞳が、私をジッと捉えてて。
「もう飲むモノ無いから、コンビニ行ってくるからさかたん待ってて？」
『…………』
財布とスマホを手に取って玄関に向かえば、ぺたぺたと足音を立てながらさかたんがついてきて。
サンダルを履こうとした瞬間。
腕を掴まれた。
驚いてパッとさかたんを見上げた私に、さかたんはどこか寂しそうに微笑みながら。
『呑みに来たんじゃないんだ』
「……え？」
『呪い、かけにきたんよ』
何を……と。
聞き返そうとした私の唇を。
さかたんんがそのまま塞いだ。
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