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「そろそろかな」
僕は腕時計を確認する。
片道三十分と見積もって、そらるが病院に着いたのは大体一時半。
病室に入ってから約三十分経つ。
そろそろ居心地の悪さが薄れて、お互いの近況以外の雑談を始める頃合いだろう。
そこまで思考を巡らせたところで、僕はハッと我に返った。
「あ……ごめんなさい、関係ないこと考えちゃった」
せっかく会えたんだから、楽しい話をしよう。
十五分という限られた時間を、もっと有効に活用しなきゃ。
「ね、お母さん」
僕はアクリル板越しの母に笑みを向けた。
「今日は講義が無い日なんだ。だから平日でも来れたんだよ。面会って平日しかできないから、今日が絶好のチャンスだと思って」
母の反応は無い。
「手紙、読んでくれた？ なるべく綺麗に書いたつもりだけど、読めない字があったらごめんね」
何の言葉も返って来ない。
「同封した入学式の写真、見てくれた？ 満開の桜が綺麗でね、キャンパスのどこにいてもお花見ができるんだ。お母さんにも見せてあげたかったな」
母は身じろぎすらしない。
いくら喋りかけても、伏せられた目が僕に向けられることは無い。
僕の声が聞こえているのか、それすら怪しく思えて来た。
「……はぁ」
思わず溜め息を吐いてしまった。
全く、仕方ないな。
根性は曲がっていても、自分の意思は絶対に曲げないんだから。
「そんなに『彼』が気になるの？」
だったら、もっと捻じ曲げてやる。
「僕を殺すこともいとわない、大切な人だったんでしょ？」
母は射るような鋭い視線を向けてくる。無様な敵意が剥き出しだ。
「その愛情を手に入れるためには、他者に刃を向けることも容易い。邪魔者は排除して、二人きりで幸せになりたい。そうだよね？」
「……何が言いたいの」
唸るような低い声。
しかし、微かに震えている。
動揺していることが見え見えだった。
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さっぽん - 次のお話を楽しみにしています！！ (2021年5月19日 21時) (
レス) id: 6727f20ffd (このIDを非表示/違反報告)
凛音(プロフ) - すごく楽しませてもらっています！病み系のものが少ないのでできれば長期化してほしいです！ (2020年8月14日 3時) (レス) id: 19593b8502 (このIDを非表示/違反報告)
恋花ﾚﾝｶ - すごくドキドキします！続きが楽しみです！ (2020年5月4日 11時) (レス) id: 434c29f1e9 (このIDを非表示/違反報告)
ときあめ(プロフ) - めちゃくちゃ鳥肌たちました……どこか薄暗いような、気が滅入るようなお話が大好きで、この作品を読んでこれだ！感がすごかったです笑続きを楽しみにしてます。 (2020年1月26日 14時) (レス) id: 5d5f606a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マミカ | 作成日時：2019年12月5日 14時
