その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

ハッピーからアンハッピー ページ47

時は1500年…、リリャンヌ王国では王子ギルと隣国の姫であるエレーナの結婚式が行われようとしていた…。

しかし！その前夜、謎の魔王にエレーナを連れ去られてしまう！ギルはエレーナを連れ出すために、打倒魔王を目指して旅に出ようとする。そこで騎士を連れて旅に出る際、以前命を助けた村娘のロゼッタがギルを呼び止める。

実は密かに王子を慕っていたロゼッタ。告白をするも、ギルはエレーナへの想いを曲げずに旅へ出る。

騎士たちと協力して魔界へ向かい、決死で魔王を倒す！そうして、平和の訪れた世界で、ギルとエレーナは愛を誓う…。



「変えます」



びっ、とシャーペンで佐原はシナリオにバツ印を大きく引いた。あらら、と声を上げる伊藤に構わず、真っ白なノートに文章や単語を書き出していく。

「でも、少しだけ。主人公をギルじゃなくてロゼッタにするの」

「え、ロゼッタ？」

「うん。表向きは冒険ファンタジーなんどけど、実は村娘の悲劇なの。視点を村娘へと移して、他は元のストーリー。これで少し侑くんの台詞とか減らせる」





────────時は1500年。リリャンヌ王国のとある村で、密かに王子に想いを寄せる村娘がいた。その名はロゼッタ。以前王子に命を助けてもらった事がある。

しかし、想いを寄せていた王子は晴れて隣国の姫であるエレーナと結婚式を挙げることに。嬉しく思いながらも悲しみを抑えられずにいると、なんとエレーナが魔王に攫われる！

すぐに助けに行こうとする王子に、ロゼッタは伝統のお守りを渡し、想いを告げるが、王子の気持ちは変わらない。

王子はそのお守りの力もあり、見事魔王を倒し、晴れてエレーナを連れ戻す。

最期、ロゼッタは二人の永遠の幸せを願いながら、持っていた短刀で胸を────────。




「おおう！えらい悲恋やん！」

「この方が胸を打たれるからいいかなぁって！」

にっ、と楽しそうに笑う佐原を見て伊藤は「えぇよ。儚くて私も好きや」と笑った。無表情で有名だった友達は、最近よく笑うようになった。それは友達としてなにより嬉しいこと。その理由は、本人は屹度気づいてない。


「ちょい飲みもん買うてくるね。Aなにがえぇ？」
「ありがとう！ココアがいい」
「りょーかい」


伊藤が教室を出ていくのを眺めながら「いい友達を持ったなぁ」と佐原はぼんやり思う。そのままシナリオを修正していると、目の前に人の気配を感じた。その数、3。






「佐原サン、ちょっとええ？」

どんな顔→←好きな子ほど。

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